東京都知事候補渡邉美樹ワタミ会長の利益相反

4月に迫った東京都知事選に、居酒屋チェーン「和民」で知られるワタミ(株)の渡邉美樹会長が立候補を表明するという。
渡邉氏は大企業を経営してきたゆえ、同じく大組織である都庁を引っ張るに相応しい人と言えるだろう。
しかしワタミは外食事業の他、介護事業など地方自治体と少なからぬ関係を持つ事業を営んでおり、渡邉氏の立場では都政と「利益相反」になるのではないだろうか。

介護事業は、例外もあるだろうが多くが公的介護保険で支えられている。
誰もが出来れば介護を受けずに済めばいいと思う願望を持っている。そして事前に支払う介護保険料と実際に受け取るサービス給付の量が必ずしも比例しないという「保険制度」という仕組みと相まって、介護給付(介護事業)は大きくならない方がいいと国民から思われているはずである。
また行政側としても、保険とはいえ事実上公費が投入されている制度なので給付拡大は望まないのが偽らざるホンネであろう。
他方、事業者としては給付総額は多い方がいいのは当然のことだ。

渡邉氏は行政の長になるなら、ワタミの経営に影響を及ぼす立場から一切身を引かなければならないのではないだろうか。
それだけでなく、ワタミに関する全株式も手放すべきだ。(もちろん他の会社の株も保有すべきでない)

渡邉氏が公私混同するような人物とは、とても思えない。むしろ多くの有権者を魅了し厚い信頼を寄せられる方に違いない。

しかし東京都知事の権力の大きさからすれば、その立候補者に極力利害関係の整理を求めるべきであろう。

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国内の畜産業を保護することで誰に利益があるのか

10日、日豪EPA締結交渉が合意の無いまま終了した。日本政府はコメ、牛肉、小麦、砂糖そして乳製品を関税撤廃の例外とすることを主張する一方で、オーストラリア政府はコメ以外の例外を認めなかった。
いったい日本が牛肉や乳製品を生産する国内の畜産業者を温存しておく意味などあるのだろうか。

第一に食料を選ぶ消費者の立場からすると外国産品を高率の関税で価格を引き上げられるのは、始めから自分の好みに合う商品を選択する機会が奪われていることになる。
そして政府の関税収入額は、おそらく畜産業界に対する補助金相当にしかならず国民の為になっていないのではないか。

価格や品質の話を脇に置いても、国内の畜産業者が特に食肉の安定供給に役立つのとは思えない。過去に狂牛病など外国産の肉について問題が生じたこともあったが、一部の国の危機であり、代替の輸入先は存在する。
また国内の家畜も疫病とは無縁で無い。ここ数年国内の一部地域で鳥インフルエンザや口蹄疫が猛威をふるい、たくさんの家畜が殺され埋設された。

家畜に発生した病気をその業者自身や畜産業界だけの努力で克服できるとも限らない。口蹄疫の蔓延では公務員が消毒や死骸の埋設に出動した。またウィルスの拡散を防ぐために周辺では交通規制を強いられた。

国内の畜産業とはいえ、その飼料の大半の供給元は外国に依存している。畜産業者が飼料用作物が育つ土地を囲っているわけではないのだ。だから国際的な飼料需給環境に翻弄される立場でしかない。

そもそも内外の畜産物の供給が途絶えても国民は魚介類で動物性タンパク質を摂取できる。国民の食という観点では肉が常時必須というものではない。

そして畜産業は大量の水と飼料を必要とし、その結果排泄物の処理も馬鹿にならない量であるので自然環境の保護という面からも畜産業の存在は悪影響がある。

詰まるところ国内の畜産業の保護には、国民に負担を強いる面ばかりしか存在しない。食肉の供給元は外国中心にして安くて美味しい肉を享受し、国内畜産業者を廃業するよう仕向けたほうが日本全体の利益に適うのではないだろうか。

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都市の出生率は田舎と同程度でなければならないのか

川勝平太・静岡県知事が静岡市に対する福祉医療費助成を来年度も支給するに当たって、静岡市の合計特殊出生率の数字を上げて市政を批判した。静岡市の出生率は1.30と県平均1.44を下回っており「猛省を促したい」そうだ。
しかし静岡市に限らず人口の集中しているところは、広い住宅を確保しにくい。子どもにもひとり一部屋という昨今の家庭事情からすると、大都市のような人口集中地区には子沢山を期待できないのではないか。

静岡市は県庁所在地でもあり行政の中心的都市である。また密集した商業地域でもある。
責任の重い仕事のあるところには、当然仕事のデキる女性も集まってくる。彼女たちは、デキるゆえ晩婚・非婚の割合が比較的高いはずだ。そうなれば出生率が他の地域より低くなるのは当然と言えるし、それは市政が悪いからという理由で片付けられまい。

もし彼女たちが、行政の支援により結婚・出産を望んでいるなら幾らか対策を打つ余地もあろう。
しかし単に合計特殊出生率という数字の大小だけ比較して、何処其処の地方自治体は怪しからんと決めるのは乱暴な判断である。

確かに子どもを持ちたいのに持てない人の気持ちや、急激な少子化で社会が支えるのが困難になる可能性を考えれば川勝知事の出生率を参考にする姿勢にも反対できない。
ただし何処でも出生率が一律であることが正しい現象という訳ではないはずだ。

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不公平な専業主婦の年金切り替え漏れ救済策

現状の年金制度ではサラリーマンの妻は25年間以上専業主婦であった場合(年収130万円未満)、その間国民年金保険料の支払い無くして国民年金の受給権を得られることになっている。(妻と夫が逆の立場なら夫の方が支払わずに済む。)
仮にサラリーマンの妻を専業主婦として40年間務めれば、国民年金を満額受け取れるのだ。
しかし配偶者がサラリーマンを辞めたなら、それ以降専業主婦(主夫)であっても支払い義務が発生する。にもかかわらずその仕組みを知らずに支払いを怠っている人が何十万人もいるという推計を31日日本年金機構が明らかにした。
厚生労働省は、過去2年分を払えばそれ以前の支払い義務のあった未納期間も支払ったこととして扱うよう「救済」するという。それでは本来の制度に従って支払ってきた人が馬鹿を見たことになるのではないか。

救済方法としては、何も未納を納付したことにするということまでする必要は無い。
例えばサラリーマンの妻としての期間が24年しかない為、無年金状態ならは受給権獲得に必要な25年の支払い期間を満たさなくても24年分に相応の年金を受給できるようにしてもよい。
また基本的に過去の未納分は2年分しか遡って支払うことが出来ないが、救済策としてそれ以前の未納分もすべて支払いを受け付けるとしてもよい。このように年金制度を理解し義務を果たしてきた人が馬鹿馬鹿しく感じることのないような方法があるはずだ。

そもそもサラリーマンの配偶者(大抵は専業主婦であるが)を、年金保険料の支払い無しで受給権を得るという仕組み自体が不公平な制度である。その上さらに救済策なるもので一部の期間の未納を納付扱いにするとはどこまで(年金制度に無関心な一部の)専業主婦を優遇するのか理解できない。
これも政権の選挙対策なのだろうか。

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抗がん剤に副作用救済制度は適しているか

28日政府は肺がん治療薬イレッサの副作用を巡る訴訟で、和解勧告を拒否することを地裁に伝えた。
その一方で細川厚生労働相は抗がん剤が医薬品副作用被害救済制度の対象にならない問題について検討するべきと言及した。
そもそも余命宣告をされるほどの末期がんで、選択された治療以外での救済など在り得るのだろうか。

医薬品の副作用による救済とは、その医薬品を使わなくても苦痛なしで何年も生きること出来た可能性が高かったという場合になされることが相応しい。
例えば予防接種による副作用として障害を負った場合は、まさに救済されるべき対象と言えるであろう。接種自体が社会から求められている事情も合わせれば、国民全員で副作用の被害にあった人を支えるのは当然と言える。
また、予め製薬会社や治療に当たる医師が副作用の症状に対する何らかの補償を約束するのも彼らの自由の範囲内だ。

しかし、末期がん等放置しておくと短期間に死に至る病状である場合は話が別である。そもそも治療方法の選択肢が限られていれば患者本人にしてあげられることはそう残っていない。
そして発生した副作用が個別の患者に対しては予知できないものであったなら、遺族への金銭的補償を製薬会社や医師に強いる筋合いはない。

がん治療とは未だ開発の途上である。また一刻でも早い特効薬を望む患者がいる。よって今後もがん治療はたくさんの患者に施され失敗しながら進歩していかざる得ないだろう。
例え患者やその家族が想定外の劇症に出くわしたとしても、国や製薬会社へ非難・金銭的賠償請求することは治療の進歩に寄与しないのではないか。

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完璧な医薬品の情報を求めることの結末

肺がん治療薬「イレッサ」の副作用を巡る訴訟で、被告の国は輸入販売会社「アストラゼネカ」に続いて大阪、東京両地裁の和解勧告を拒否する模様だ。
和解勧告はイレッサ承認当初から副作用を警告する緊急安全情報を発表するまでの間に服用した患者の救済責任を国・販売会社が認めるよう勧めているという。
しかし国は他の治療薬を差し置いてイレッサの服用を強制した訳でなく、また販売会社は問題となっているイレッサによって間質性肺炎になる可能性を隠していたようでもない。現在に至っても完璧な癌治療薬が存在していないのに、新薬の副作用で賠償責任を問うのは行き過ぎではないか。

■副作用の情報を知ったところで避けられない

イレッサが使用されるのは手術不可能だったり再発した肺がんに対してである。すでに治療手段が限られている状態と言える。
そのような場面に追い込まれれば、患者は副作用で死んでしまう可能性のある治療薬でも藁にもすがる気持ちで処方を望むのではないだろうか。手を尽くした状態で余命を宣告されているのだろうから。
抗がん剤について副作用の説明が意味を持つのは、患者とその家族にとって副作用を受け止める準備になる。そして医療を提供する側から見ると訴訟対策になる。それだけだ。

■正確な副作用の情報の蓄積を得るには多くの治験参加者が必要

イレッサ訴訟の原告が求めているだろう医薬品の副作用の正確な情報とは、多くの治験参加者があってはじめて獲得できるものである。同一の病の患者を出来るだけたくさん集め、経過を観察する必要があるのだから時間もかかる。はっきり言えば結局誰かの犠牲が伴うのだ。

では現在承認されている治療薬では罹患しているがんの進行を食い止められなく、新薬を待ち望んでいる場合はどうなるか。
製薬会社が副作用の情報を積み重ね、国が薬の承認に慎重になることを求めるなら当然新薬はなかなか供給されることは無い。
切羽詰ったがん患者は「治験参加者」としてでも期待される治療薬を手に入れようと考えるだろう。そして治験で副作用が出たとしても製薬会社に予め「免責」という条件を飲まされて投薬してもらうというのがその結末ではないだろうか。

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政府専用機というムダ

天皇や首相が公務で海外に渡航する際に使用されてきた政府専用機「ボーイング747-400型」2機が数年後に退役する見通しになった。整備を委託してきた日本航空が747型機の退役を進めているため、もはやその能力を維持できなくなったからだ。
当の政府専用機は実際のところ、輸送には年十数回しか使われてないという極めて低い稼動数。そしてこの「ジャンボジェット」の政府専用機は緊急事態に海外の邦人を保護する目的も持ち合わせているが、その巨体で一度に輸送できるのはわずか150名だけという。
大型旅客機を基にした政府専用機の運用はムダが多いため、維持不可能な環境を迎えるのを待たず即廃止すべきではないだろうか。

あらかじめ決定している行事への要人の渡航には、民間機のチャーター便で間に合うであろう。民間の保有なら政府が借りていないときも、当然商売で乗員と機体が有効利用される。
またチャーター便を確保する時間的余裕のないという理由だけなら、小型のジェット機の保有で済むはずである。

海外の危険地域からの邦人の脱出には、航空自衛隊の保有する空中給油・輸送機KC-767Jが使えそうだ。「給油」と名の付く名称を持っているが、200名も人員を輸送できる。速度、航続距離もジャンボジェットの政府専用機を超える能力を持っている。航空自衛隊は既に4機を取得している。

この政府専用機B-747の維持こそ国の税金の無駄遣いの象徴的存在だ。

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比例代表選出議員は政党を離脱してはいけないのか

第2次菅内閣に加わった与謝野馨経済財政担当相が、その身の振り方について度々非難を受けている。
今まで野党として民主党政権を非難しておきながら「たちあがれ日本」を離党し与党と同一会派になること。さらに以前は自民党から衆議院選に立候補し小選挙区で破れたうえ、比例代表選出として復活当選したにもかかわらず、自民党を去り「たちあがれ日本」に参加したことという前科もある。
しかし政治は妥協しなければ問題が解決しないこともある。任期中の変節も仕方が無いのではないか。

現状のところ連立与党の保有議席は参議院で過半数割れであり、衆議院でも2/3に足らず予算関連法案を通すことが出来ない。与党の民主党でさえ妥協を迫られている。
また参議院はどの政党も過半数を持っていないため、解散・総選挙が行われて衆議院の2/3の議席を獲得する政党が出現しない限り、少なくとも今後2年以上は「ねじれ国会」が続く。

また現在参議院の選挙制度が一票の格差是正のために話題にもなっているが、西岡参議院議長が提案している参議院議員全てを比例代表制で選出する仕組みに変わったなら、小党が分立する可能性もより高くなる。比例代表は死票が少ないからだ。

政治の本質を考えても現在の日本の各政党の支持率から見ても妥協をせざる得ない状況ではないだろうか。

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定年延長頼みの年金支給開始年齢引き上げ

21日与謝野馨経済財政相が年金支給開始年齢の引き上げについて発言した。
「人生90年を前提に定年延長を考えなければならない。年金の支給年齢の見直しもあり得る」
年金財政が逼迫しているからと言っても、高齢者には求人が少ないので年金受給が遅れては困るに決まっている。またそのツケを定年延長として企業に払わせるのも非常に迷惑な話だ。

■高齢に伴い活躍できない事情が増えるばかり

高齢者と言えば、第一に本人の健康問題が上げられる。本人や配偶者そして親、誰もが歳を重ねて体は弱っていく一方だ。自分の健康や家族の世話をするため、職務に以前ほど専念しにくくなる場合がある。
また今まで積み上げてきた豊富な経験のせいで、新しい時代の流れを素直に受け入れられないということもあろう。
長きに渡って働く間、たくさんの人に世話になりいろいろな義理を感じるようになる。すると斬新な試みをするにも周りに気を遣ってしまい、なりふり構わず貫き通すということに抵抗感を覚えるかもしれない。

■いつまでも辞めないなら企業も困る

そんな高齢者を年金財政の困窮のため企業に押し付けられては堪らない。結果従業員の解雇規制を強めれば強めるほど、雇用期間の定めの無い契約(いわゆる終身雇用)を結ぶことを企業は躊躇するようになる。勿論、高齢者の雇用の負担で他の企業に敗北してしまったら元も子もない。
定年退職とは、能力を問わず一律に職場を去ってもらう制度である。この杓子定規な退職制度はある意味労働者の面子を潰さずに、会社の高齢化を抑制するという良い面がある。
そんな利点も、定年そのものを引き上げてしまったら有り難味が薄れてしまう。

結局増税で年金財政を立て直し、60歳過ぎたら年金を支給できるような制度を守るしかないのではないだろうか。

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年金財源は全額税方式か社会保険方式か

菅第2次改造内閣の発足において、菅直人首相が「社会保障と税の一体改革」担当大臣として与謝野馨氏を充てた。
その与謝野氏は現行の社会保険料の徴収に年金財源を求める方式(社会保険方式)が良いと考えているようだ。「社会保険方式という国民が慣れ親しんだ枠内で改革することが合理的だ」と発言したという。
菅首相も14日の記者会見でそのような議論になることも許容すると表明している。
しかし、2009年の総選挙の民主党マニフェストで公約した財源の全額税方式による最低保障年金の導入まで約束を反故にしてしまうのか。

■社会保険方式の欠点

与謝野氏の現行の年金制度に対する「国民が慣れ親しんだ」という言い方には非常に違和感を感じる。
国民年金の受給をするには最低25年という年金保険料の納付期間が要求され、その結果納付期間の足りない一部の国民が無年金状態となっている。
また勤務形態や所得によって年金保険料の額が変化する現行の仕組みも相まって、いざ受給年齢を迎えてもいくら年金が貰えるのか当人にはよく分からない。何と言っても納付記録を正確に保管しているはずの社会保険庁までが杜撰な管理のため「消えた年金」問題を引き起こしたのは記憶に新しい。

全額税負担方式による同一額の最低保障年金なら、そんな欠点も生じない。

■生活保護基準額と年金支給額との不条理な関係

所得があるにもかかわらず、年金保険料の支払いを避け続け年老いて一文無しとなったとしよう。そのうえで生活保護を受けたとする。
すると国民年金の保険料を法律に従って40年間つまり満期の納付の場合で年金受給する額よりも生活保護による現金給付のほうが多くなることもありうるのだ。大都市では単身者の生活保護支給額が月額13万円程度になる。安月給なサラリーマンの厚生年金並みと言える給付水準だ。もちろん月額6万数千円の国民年金よりずっと多い。

年金問題というより生活保護の問題と捉えたほうが良いかもしれないが、現行の社会保障制度はコツコツと年金保険料を納めるのが馬鹿らしくなる。

■消費税を財源とした最低保障年金と任意の拠出による年金の二本立て

所詮国の歳入は複数の税で賄われているから、全額税方式の年金を導入した場合どの税がその原資になっているというのは、曖昧な物だ。
それでも年金財源に相応しい税をあえて上げるなら消費税だろう。貧しい人や社会保険方式なら不払いを決め込むような人からも容赦なく徴税するのが消費税だ。

加えて個人の希望に応じた任意の拠出による年金制度を用意すれば、公平且つ支払い能力相応の年金制度になるのではないだろうか。

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