4月に迫った東京都知事選に、居酒屋チェーン「和民」で知られるワタミ(株)の渡邉美樹会長が立候補を表明するという。
渡邉氏は大企業を経営してきたゆえ、同じく大組織である都庁を引っ張るに相応しい人と言えるだろう。
しかしワタミは外食事業の他、介護事業など地方自治体と少なからぬ関係を持つ事業を営んでおり、渡邉氏の立場では都政と「利益相反」になるのではないだろうか。
介護事業は、例外もあるだろうが多くが公的介護保険で支えられている。
誰もが出来れば介護を受けずに済めばいいと思う願望を持っている。そして事前に支払う介護保険料と実際に受け取るサービス給付の量が必ずしも比例しないという「保険制度」という仕組みと相まって、介護給付(介護事業)は大きくならない方がいいと国民から思われているはずである。
また行政側としても、保険とはいえ事実上公費が投入されている制度なので給付拡大は望まないのが偽らざるホンネであろう。
他方、事業者としては給付総額は多い方がいいのは当然のことだ。
渡邉氏は行政の長になるなら、ワタミの経営に影響を及ぼす立場から一切身を引かなければならないのではないだろうか。
それだけでなく、ワタミに関する全株式も手放すべきだ。(もちろん他の会社の株も保有すべきでない)
渡邉氏が公私混同するような人物とは、とても思えない。むしろ多くの有権者を魅了し厚い信頼を寄せられる方に違いない。
しかし東京都知事の権力の大きさからすれば、その立候補者に極力利害関係の整理を求めるべきであろう。