年金財源は全額税方式か社会保険方式か

菅第2次改造内閣の発足において、菅直人首相が「社会保障と税の一体改革」担当大臣として与謝野馨氏を充てた。
その与謝野氏は現行の社会保険料の徴収に年金財源を求める方式(社会保険方式)が良いと考えているようだ。「社会保険方式という国民が慣れ親しんだ枠内で改革することが合理的だ」と発言したという。
菅首相も14日の記者会見でそのような議論になることも許容すると表明している。
しかし、2009年の総選挙の民主党マニフェストで公約した財源の全額税方式による最低保障年金の導入まで約束を反故にしてしまうのか。

■社会保険方式の欠点

与謝野氏の現行の年金制度に対する「国民が慣れ親しんだ」という言い方には非常に違和感を感じる。
国民年金の受給をするには最低25年という年金保険料の納付期間が要求され、その結果納付期間の足りない一部の国民が無年金状態となっている。
また勤務形態や所得によって年金保険料の額が変化する現行の仕組みも相まって、いざ受給年齢を迎えてもいくら年金が貰えるのか当人にはよく分からない。何と言っても納付記録を正確に保管しているはずの社会保険庁までが杜撰な管理のため「消えた年金」問題を引き起こしたのは記憶に新しい。

全額税負担方式による同一額の最低保障年金なら、そんな欠点も生じない。

■生活保護基準額と年金支給額との不条理な関係

所得があるにもかかわらず、年金保険料の支払いを避け続け年老いて一文無しとなったとしよう。そのうえで生活保護を受けたとする。
すると国民年金の保険料を法律に従って40年間つまり満期の納付の場合で年金受給する額よりも生活保護による現金給付のほうが多くなることもありうるのだ。大都市では単身者の生活保護支給額が月額13万円程度になる。安月給なサラリーマンの厚生年金並みと言える給付水準だ。もちろん月額6万数千円の国民年金よりずっと多い。

年金問題というより生活保護の問題と捉えたほうが良いかもしれないが、現行の社会保障制度はコツコツと年金保険料を納めるのが馬鹿らしくなる。

■消費税を財源とした最低保障年金と任意の拠出による年金の二本立て

所詮国の歳入は複数の税で賄われているから、全額税方式の年金を導入した場合どの税がその原資になっているというのは、曖昧な物だ。
それでも年金財源に相応しい税をあえて上げるなら消費税だろう。貧しい人や社会保険方式なら不払いを決め込むような人からも容赦なく徴税するのが消費税だ。

加えて個人の希望に応じた任意の拠出による年金制度を用意すれば、公平且つ支払い能力相応の年金制度になるのではないだろうか。

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年金財源は全額税方式か社会保険方式か への5件のフィードバック

  1. hiro のコメント:

    まあ、保険方式か税方式かとか、ナンセンスだと思いますけど。。

    国保に限って言えば国庫負担が1/2だから、現状は、保険と税方式のフィティフィティ混合方式ですよね。その認識が無さ過ぎの気がします。。

    保険方式でやると言うなら、国庫負担いれるなよ、と思いますが。(そういう曖昧議論が訳分からなくしてる。。)

    だから国庫負担1/2を、税方式の最低保障年金・月/3.5万とかにスイッチして、国保払ってる人はソレに現状の支給額1/2を足しこめばイイだけと思いますけど。それが国庫負担はいっている以上、筋として正しいとおもいますけど個人的には。(現状との差額として数兆規模かと。。スキーム的には共産党の言ってる五万/最低保障年金と同じです。)

    仰るように、要は無年金者が出ていいのか。悪いのか。生活保護への流入はどう考えるのか。。そういう原理原則が曖昧だから訳わからないですよね。

    高齢者増えるんだからお金増えるのは当たり前。それを保険/賦課方式の中で調整するのか、税=国民全体の中で調整するかは、小手先のテクニックじゃなくて、原理原則・基本的考え方の範疇だと思うんですけどもね。。

  2. 佐藤健 のコメント:

    >hiro様

    こんにちは、先日はたくさんのコメントを有難うございました。

    そうです、既に年金制度の財源に「国庫負担」の部分があるのですから筋を通せばhiroさんの仰るとおりです。

    理由はどうであれどうしても保険料を未納のまま「スッテンテン」で職業人生を終える人が出てきます。そんな人を放っておくわけにも行きませんから(個人的には突き放したいですけれど)、一定額を均しく配るのは避けられないと思います。

  3. hiro のコメント:

    >佐藤様

    返信ありがとうございます。。

    例えば国保の払い込み期間が24年11月で受給資格がない人がいたとして、その人が受給できないのはそういうルールだから仕方が無いと仮にしたとして・・・ただ、その人が払っている税金が自分が受給資格のない国保の国庫負担1/2に流入するというのは、やっぱり変な気がします。負担と受益と関係からも。

    要は国庫負担1/2が存在するということは・・・保険×賦課方式では、もう、まわらないということで・・・それが、なんで世間的に、税方式か社会保険方式かという議論になるのか・・・理解に苦しみますよね。ホント「見えない化」というか、頭わるいのかwという感じです。

    >加えて個人の希望に応じた任意の拠出による年金制度を用意すれば、公平且つ支払い能力相応の年金制度

    これは多分同意見と思いますが・・・加えて個人の希望に応じた任意の拠出による年金制度は別に国がやらなくても民間でやればいいと思います。基本的には、年金改革案は2002年だったか経済同友会の『税式の最低保障年金を導入して、二階部以降の制度は清算/解体』が一番優れてると思います。個人的には。

    ちなみに、先日BSの年金特集番組で、大塚議員と浅尾議員が口をそろえて、現状の年金制度の積立方式への復元は、現実的にはもう不可能と言ってました。。

  4. 佐藤健 のコメント:

    >hiro様

    こんばんは。コメント有難うございます。

    「25年の納付期間を要求すること」
    これも脱落者を生む原因ですね。まあ五体満足の男に生まれたならそれぐらい何とかしろといいたいところですが、妊娠・出産・幼児期の子育てを担う女性達にそこまで求めていいかは微妙です。

    「頭わるいのか」
    って言われたらスイマセンとしか返す言葉はありません。
    誰もが老後はずっと先と思って、貰う直前になってしか年金制度への関心が湧いてこないのでしょう。
    ただきちんと年金の掛け金を払い込んできた人から見て、税金だけ払い年金の受給権を得ず生活保護も受けないで生きている人は年金財政に寄与して下さる有難い方でもあります。

    確定拠出型の年金ならば民間企業の管理がいいと思います。その部分でhiroさんと同意見です。

  5. hiro のコメント:

    そうなんですよね。。個人的には年金は税方式にして、ナショナルミニマム的なものに限定していった方が良いというか/リスク少ないと考えています。。

    ただ超暴論書くと・・・年金ていう、年齢属性で切るシステム自体になんか根本的に疑問もあるんですよね。個人的には。今後とも高齢化が急速に進み、かなりの人は元気で、、また一部とはいえ老老相続等々、高齢者に富が偏在する傾向が続くとすれば。。

    年金廃止しろとか言うと暴動起きるかもなので・・・・年金・税方式にして、ナショナルミニマム的なものに限定しつつ、年金支給に年収(&資産も??)制限かけていき・・・・実質的&最終的にオール世代向けの「負の所得税」とかに統合/収斂していくとか。。(BIでもいいですが、まあ、それはムリとして。)

    増え続ける負担を考えた場合、オール世代向けの施策に統合/収斂とかも考えないと、、持続できるのかなあ~、、負担側が耐えきれるのかな、、とも思います。。

    別のところから・・・>自由化効率化の果てにどんな日本を描いているかと言えば、たくさんの高齢者を少ない労働者で支える社会です。

    ベース賛成なんですよね。ただ、たくさんの高齢者を少ない労働者というよりは・・・ある程度数存在する貧困層を比較的少ない富裕層&中間層が支える社会・・・・という感じ/言い換え、というか。(無論、介護等は別に考えるとして)
    大変乱文にて失礼します。

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