現在の雇用に拘る中野剛志氏のTPP論

京大助教中野剛志氏はTPPは日本の利益にならないと主張している急先鋒だ。
http://www.youtube.com/watch?v=nRmNJpUj5sI
その根拠は
●全てのTPP参加国から見て日本市場は大きな輸出先である。
●他方日本から見てTPPの参加国の多くは、それ程大きな市場では無い。
●唯一巨大市場のアメリカと相互に関税を全廃しても、アメリカのドル安政策で日本は輸出を増やせない。
よって日本はTPPによって輸出を増加できないばかりか雇用を失い、また農業も廃れ取り返しのつかないことになると結論づけ危惧をしている。
しかし巨額の対外純資産を蓄えている日本こそ、大いに消費を楽しむ権利があるとも考えられるし、将来労働力人口の減少が確実なのだから海外に任せた方が生産性が高い物資は輸入に切り替えるべきではないか。
以下に反論を上げてみる。

■そもそも輸入も増やさなければ、円高が進行してますます輸出が困難になる

これまで日本は30年以上にわたって経常黒字を保っている。そのため円高が止まらず輸出のハードルは高くなる一方である。円相場が上昇する度に工場の海外移転やその下請け企業の廃業など、外貨を稼いだり納税をする「優良な雇用」が危機を迎える。それが過去から現在に至るまで日本の経済の大きな悩みである。
為替相場を安定させるための根本的な解決は経常収支を均衡させること、日本の場合は結局輸入を増やすしかない。

何を輸入するかは政府が決めるのではなく、関税をはじめとした貿易障壁を全廃したうえで個々の経済主体が選択できる権利が認められるべきだし、それが最も効率が良い。

■関税撤廃は小国相手からでも構わない

日本と比べて経済規模の小さい国が相手でも、互いに関税の無い公正な取引環境が構築できるならそうすべきだ。
当初は日本の輸出はそれほど増えないかもしれないが、小国が日本相手に利益を実現していけば、より大きな別の国が貿易障壁の相互撤廃に参加する動機になるだろう。(韓国がFTAを進めている傍らで、日本が焦っているのと同様なことが起こるはずだ)

なおTPPの参加交渉がTPP参加国以外とのFTA交渉を阻害するものではないだろうから、TPP参加国以外の大きな市場を持つ国と自由貿易交渉を同時に進めてもいいではないか。

■いつまでも輸出超過で巨額のドルを保有しているのは危険

中野氏はTPPについてアメリカ側が輸出を増やすこととは日本にとって損と考えているようだ。しかし、そうとばかりも言えない。
日本は経常黒字にもかかわらず円高を阻止しようとして為替介入を度々実行してきた。その結果、政府は約80兆円相当のドル建資産を保有することとなった。既に政府は過去の介入後の円高ドル安によって含み損を抱えているはずだし、恐らく今後もドルの価値は下落の一途でドル建資産の保有は危険を伴う。
そうならば、米国債を買って保持するよりアメリカから必要な物を買った方がいい。勿論それは為替介入より円高を止める有効な手段でもある。

■輸入を増加させて日本の少子高齢化社会を乗り切るべき

中野氏の危惧は雇用の減少だ。TPPが実現したら農業分野に限らず様々な国内の産業が淘汰に遭うに違いない。確かに仕事を失うことによる個人への悪影響は極めて大きい。
ただし日本は今後21世紀半ばまで急速な高齢化を迎える。総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)の割合は2050年までに約60%から50%程度に低下すると推定されている。既に現在でも肉体的にキツイ不人気な労働は外国人を日本国内に連れ込んで当たらせているし、将来さらに人手不足が深刻化する可能性がある。長期的に日本が必要としているのは雇用増加ではないのだ。

慢性的な人手不足なら、儲からない商売や国から補助金を受けている事業から生産される商品は輸入品に取って替わるのが望ましい。ここはやはり自由貿易による競争で企業の淘汰を進めるべきである。

■農業を特別扱いする必要は無い

農産物の関税撤廃によって日本国内の大部分の農家が壊滅的影響を受けることを心配するのは、中野氏だけではない。日本の食料自給率がさらに低下すると、いざというとき食料の確保が難しくなるとというのが農産物輸入自由化に対する典型的な反対理由だ。
食料の確保が心配になる気持ちは分かるが、もともと全国民に必要なカロリーを用意する能力が無いコメ農家・小麦農家を当てにするより外国から格安の穀物を政府が備蓄してくれた方がずっと安心確実ではないか。
民主党は農家を始めとした第一次産業に総額1.4兆円の戸別所得補償をするとマニフェストに掲げている。毎年それほど配るくらいなら、同額で全国民が一年間飢えを凌ぐ分の穀物を外国から輸入して備蓄できそうだ。毎年続ければ数年分蓄えられる。

■日本はお金持ち、買い手の立場 決して不利ではない

もし中野氏の見方同様アメリカを始めとしたTPP参加表明国が日本への輸出が輸入を上回ると目論んでいるなら、それこそ日本は強気で交渉に向かうことが出来る。日本は彼らが望む雇用や外貨を提供する側なのだから。
TPPが形作られていく過程でそのルールが日本にとって到底受け入れられないものなら、交渉の途中で参加を取りやめ二国間のFTA・EPA交渉に重点を戻してもいい。ルール作りの交渉を始める前から日本は損すると決めてかかる理由はない。
日本は長く貿易立国として繁栄してきたのであり、またTPP参加によって国家主権を放棄するのでもない。日本全体では何ら自由貿易を恐れなくていいのだ。

関連記事:三橋貴明批判 TPPはアメリカの利益にしかならないのか
      :三橋貴明批判 中国を日本に依存させることは出来ない

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現在の雇用に拘る中野剛志氏のTPP論 への40件のフィードバック

  1. 通りすがり のコメント:

    何かを批判する上で、対象のデメリットと持論のメリットを比較することは必要かもしれない。
    しかし、その持論のデメリットをきちんと示さずに批判を終えるのはアンフェアとしか言いようがない。
    どんな理論であってもメリットがあれば必ずデメリットも存在する、見方を変えれば表裏があるものであり、
    それらを偏り無く提示しないと他者の良い判断材料にはならず、結果自己満足で終わってしまうだろう。

  2. 佐藤健 のコメント:

    >通りすがり様

    コメント有難うございます。
    確かに自己満足と言われればそうですね。
    拙文の主張に対し、通りすがりさんからデメリットを上げていただけると助かるのですが。
    よろしければお願いします。

  3. 通りすがり のコメント:

    専門的な知識が無いので、妥当性に欠ける内容かもしれませんが一応挙げてみます。
    ・輸入を増やす・・・デフレ強化の可能性
    ・企業の淘汰・・・TPPによる輸入で、儲かっている(淘汰されない方が良い)企業も
               経営危機に陥る可能性があるのでは?
    ・食料の確保・・・国産の農作物が孕むリスクは収穫に関することのみと思われるので、
               リスク分散を行う上では重要なものではないか?
    …というデメリット、見方があるのではないかと言いたかったのです。

    あと、全体に渡って限定的な状況に立った記述に見えてしまい、
    「他の要因が存在しないのか?」 「書かれている影響の範囲が実状とマッチしているのか?」
    などといったことを素人目からですが感じました。

  4. 佐藤健 のコメント:

    >通りすがり様

    こんばんは、ご指摘有難うございます。

    仰るとおり貿易障壁の撤廃は物価を下げる作用を必ず引き起こすでしょう。輸入品と競合する企業は、商品の一層の単価下落に苦しみます。
    しかし世界の物価水準に背を向けて、国内の物価をある程度の水準に統制して企業や雇用を維持しようとするのは間違っていると思います。
    貿易障壁で物価下落を防ぐということは、国内での生活に必要なコストを高くして置くことに他なりません。それは海外と日本の必要な人件費の差につながっていきます。もちろん人件費は安い国の方が強い競争力を持ちます。

    国内だけに目を向けても、参入障壁が上手く機能しない事例を見ることが出来ます。
    かつては国が法律で大規模小売店の出店規制をしていました。また地方によっては条例で進出を制限してきました。しかし大手の小売業者を排除したからといって既存の商店が繁栄し続けた訳ではありません。地域住民の財布のヒモは固く、欲しいもの目当てにわざわざクルマで遠方の大都市やショッピングモールへ出向いたりします。
    そして長期的には規制の少ない大都市が発展し、人々もそこへ移り住んで行きます。

    現状では日本国内の景気がパッとせず気前良く市場開放すべきタイミングではないという意見もあるでしょう。
    ただし輸出企業にとっては、地域間の障壁撤廃が遅れるほど不利な状況に追い込まれていきます。
    また1億2千万人の国内の消費者視点では、世界中の商品から自由に選択出来た方が利益に適います。

    人口が減少していく日本は、相対的に弱い産業(それらの産業の中には、国の補助金を貰って特別扱いされているところもありますが)を早いところ見切った方がいいのではないでしょうか。

    通りすがりさん、またよろしければご訪問をお待ちしております。
    遠慮なさらずに辛辣なご批判も残していただけると有難いです。
    よろしくお願いします。

  5. gensay のコメント:

    こんにちわ。初めてコメントさせていただきます。
    今、日本における問題は、貿易よりも内需のほうが大きいかと思いますがいかがでしょうか。
    日本は内需国で、貿易国ではないように思います。貿易はGDPの2割程度です。
    それよりも、デフレによる不況、賃金と雇用の低下のほうが、直接的にも国内にダメージをもたらしているとおもいます。
    60兆円あった税収が30兆円台まで低下しなければ、財政赤字もここまでふくらまなかったのではないでしょうか。
    デフレによって、お金の価値が上がり続け、価値の上がるものつまりお金を企業も個人も手放さないため、市場にお金が出回らない。
    そのためによる不況が我々の生活を苦しめていると感じます。
    そのデフレを助長するTPPなどといった政策は、なおのこと我々の生活を苦しめることになるのではないでしょうか。
    また、TPPで国内の食料生産を減少させるのは良くないように思います。
    一度失った食料生産力(とそのノウハウ)を復活させることは極めて難しくなります。
    人間と国家の生存に関わる部分を他国に任せるのはとても危ういことです。
    なぜなら、我が国の食料生産を輸入に頼ったことによって、我が国の食料生産力と、そのノウハウが失われたのち、それを見計らってアメリカが食料を値上げしたとき、アメリカ以外からすぐ安く食料が輸入できるでしょうか?
    中国ももはや食料輸入国になろうとしているそうです。
    そして、異常気象等の理由から世界的に食料の値段は上昇傾向にあるそうです。

    話は戻りますが、市場に資金需要がないといいますが、デフレでお金の価値が上がっていくために資金需要がないのであって、お金の価値が下がるインフレになれば、みなお金を使うようになり、資金需要も大きくなっていくのではないかと思います。
    そして、雇用の不安が解消されていけば、少子化にも歯止めがかかるでしょう。
    今、政府のやっていることはデフレを拡大させることが多いのではないでしょうか?
    思うまま書き込みさせていただきました、失礼いたします。

  6. ゆとりしんきんぐ のコメント:

    上で通りすがりさんも指摘されていますが、低価格の商品が入ってくることによってデフレが促進されるのは確実だと思います。
    そこで考えていただきたいのは、サプライヤーサイドだけでなく、需要側、つまるところデフレで所得が低下することによって購買力も低下してしまうということです。
    結果期待したほどの輸入が増えず、円高も解消されない、ということを懸念しているのではないでしょうか。

  7. 佐藤健 のコメント:

    >ゆとりしんきんぐ様

    はじめまして、コメント有難うございます。

    もし貿易障壁の撤廃によって輸入額だけが増加しその分国産品が売れなくなるなら、国民全体の所得は減少します。失業率も上がるでしょう。
    ただし「国民全体」で論じるなら、それは効率の悪い自炊から弁当購入で食事を済ますことで少々の時間的ゆとりを選択したということに例えることができます。
    自給自足に拘らず、特定の国民や業界を優遇しない自由な取引(貿易)が総じて公正かつ効率的だと思います。

    もっとも個々の労働者にすれば失業を時間的余裕と片付けられては困りますが、消費者だって国産品の購入を強要されるのは堪らないです。消費者に支持されなくなった労働者のほうが転職あるいは引退をすべきではないでしょうか。

    また外国から見て、しこたま黒字を貯め込む一方で為替を円高にならないよう画策し、ひたすら働く日本というのは迷惑な国です。貿易相手国の失業が増えることはお構いなしの政策を取って来た訳ですから。
    世界の国々と共存していくためには、相手国の失業を生むほど輸出するなら、それ相応の輸入をすべきです。

    私も輸入品を「低価格」と表現しますが、その商品が市場を支配するならその価格こそ正しい価格であり、今までの商品が高価格過ぎたと言ったほうがいいでしょう。
    低価格=デフレ→「困る」という図式は主に今まで低価格商品との競争が何らかの理由で避けることが出来た人や少なくない債務を負っている人たちに当てはまる話です。年金生活者や、現金を多く保有している人など「困る」人の反対の立場なら当然物価の下落が生活を楽にします。

    もし日本全体で「購買力の低下」という結果が生じるなら、必ずその時点で経常収支の黒字は減少しているので為替相場は円安に振れているはずです。そして再び雇用や経常収支などが調整されていくでしょう。

  8. sonokomaggie のコメント:

    はじめまして。
    勉強するつもりでコメントさせていただきます。

    たくさんあるので一つずつ。

    中野さんのTPP論ですが、あれはあくまで「戦略的に考えておかしい」からTPPによる貿易拡大は止めろ、ということではないですか。

    その理由として、TPPとFTAという枠組みがあるとしたら迷わずFTAだ、ということではないですか。さらにアメリカとのTPPやFTAについては、アメリカ国内が高失業率による需要不足(デフレ)、ドル安という手段、農業に関しては抜群の競争力(一戸あたりの農地面積は日本の100倍近く)などの諸条件により勝てるわけがない、と言うのが問題でしょう。

    だいたい規制緩和というものは、非効率産業を淘汰するのが目的ではありません。非効率産業を効率化させるのが目的ではないですか。TPPにより、日本の農業関税が限りなく0%になったら、効率化したって勝てるわけがありません。あなたの論理の前提は、だめなもんはつぶせ、というものとしか思えません。

    それに、農業では安ければ安いほどいいから農業はつぶれてもいいと言っていますが、なぜEU諸国(多分フランスだったと思います)では農業収入の8割を税金で賄ってやっているのですか。国家にとって食糧自給というのが大事だということではないですか。

    中野さんがなぜ輸出拡大という国家戦略においてグローバル化を否定しているかといえば、今現在グローバリズムは終焉したと認識しているからではないですか。グローバル化によって中東諸国の経済では、恒常的に若者の失業率は20%を超えているという話です。東南アジア、南アジア等では、グローバル化によって若年失業率は減ってはいないのをご存じですか。アメリカの経常赤字、中国の貿易黒字、特に中国、韓国、アメリカの所得格差の拡大、資源高、テロの頻発化、これはどれもグローバル化によるものではないですか。特に韓国なんて、グローバル化で強くなって豊かになったなら何で、日本に5万人(?)も風俗遠征なんてしてんですか、海外移住が何で盛んなんですか。

    このように、グローバル化による諸問題が進行中なのに、今なぜグローバル化戦略としてTPPなのか、戦略的におかしい、と言っているのではないですか。

  9. 通りすがり のコメント:

    3度目のコメントになります。よろしくお願いします。

    >人口が減少していく日本は、相対的に弱い産業を早いところ見切った方がいいのではないでしょうか。
    競争力が弱くても輸入、外国依存では国家運営上のリスクが高まるのでは?
    また、私が思いつかない他の問題点もあるかもしれません。
    それらデメリットとメリットを比較して導くことができる判断や考えを聞かせて下さい。

    それに、日本の国益を第一に考えるのが当然ですよね?
    それなら他国の失業者が増えようが、国益を最優先とする政策などをしていかなければならないはずです。

    >経常収支の黒字は減少しているので為替相場は円安に振れているはず
    この規模がどの程度のものと予想されるのかを聞きたいです。
    なぜなら、アメリカがドル安誘導をする場合、それら2つの規模の比較が出来て初めて
    最終的に円安になるかどうかが予想されると思うからです。

    また、デフレが相対的にお金の価値を上げ続けるものならば
    デフレである限り、買い控えが経済通以外の全ての人に起こる現象なのではないでしょうか?

  10. 佐藤健 のコメント:

    >gensay様

    はじめまして、長文のコメント大変有難うございます。
    (そしてご投稿を頂いたにもかかわらず、こちらのWebページの不具合のせいで投稿の表示もされず、私も暫くgensayさんのコメントに気づきませんでした。御免なさい。)

    日本はエネルギー資源のほぼ全量を輸入に頼っています。その額はGDPの数パーセントに過ぎませんが、その輸入なくしては現代の快適な生活を維持することが出来ません。また食料はコメ中心の食生活を止めてイモを主食に切り替えれば何とか1億2千万人の人口を食わせて行けそうですが、それとて国内の天候次第で不作に陥り海外からの調達を迫られるに違いありません。GDP比で僅か2割の貿易額とは言え、その中には我々日本人に欠かすことの出来ないものが多く含まれています。

    例え物価下落をTPPが助長するとしても、その物価が世界の水準なら受け入れるしかありません。同じ品質の物なら安い物を選ぶのはインフレ・デフレ状態を問わない経済主体の行動原則です。もちろん日本から一方的に高い金額でモノを輸出することも他国との競争がある限り不可能です。

    食料生産力も保持しておくことに越したことはありませんが、ノウハウの保持も含めて200~300万人も農業従事者は不要です。出来ればコメ農家など100分の1ぐらいに激減して耕地の利用を少数の人に集約くれた方がコストの面で有利ではないでしょうか。(そういう食料の安定供給本位の政策に必ずしも賛成できないのが農家なのですが)

    一口にアメリカといっても、複数の穀物商社が一体となって談合するとは考えにくいです。しかし大凶作になったらgensayさんの心配が実現するかもしれませんね。
    記事にも書きましたが、備蓄こそ安心確実な緊急の食料確保になると思います。

    世界的な食料価格の上昇ですが、高いだけで済むなら大したことではないです。もともと日本の農家が普段売る穀物価格が世界水準でいうところの凶作による暴騰価格とそう変わらないのですから。
    もし世界の農産物の価格が数年のうちに恒常的に高値で推移するなら、貿易障壁を撤廃しても日本の農地は廃れずに引き続き利用されるのではないですか。

    インフレ政策ですか?
    もし私が資産家なら、インフレだからと言って消費を増やしたりせず預金をインフレに強そうな資産に変えようとします。
    また目ぼしい資産は自宅だけ、後は年金受給権と僅かな預金だけという高齢者だったなら、インフレは苦しいです。自宅の評価額が上がれば固定資産税も上がります。そしてまだまだ生きるかもしれませんから財産を処分する訳にも行きません。
    所得税の累進課税構造はインフレによって自然に税率を上げて手取りを目減りさせます。もちろん目論見どおりにお金を使う人もいるでしょうが、インフレで困る立場の国民もいる訳です。

    もう国と地方合わせて1000兆円の債務が積みあがりました。
    これこそデフレ対策は十分してきた証拠ではないでしょうか。

  11. 佐藤健 のコメント:

    >sonokomaggie様

    はじめまして、コメント有難うございます。

    私はTPPでもFTAでもいいと思っています。そしてどちらで行くにせよ、農業を例外扱いにすべきではないという立場です。
    その結果は御指摘の通り、穀物の分野はほとんどアメリカに敗北するでしょう。それでいいのです。消費者が選択した結果ですから。

    規制緩和をしたら競争が促進され、敗者も出てきます。それ自体が目的でないにしても。(農業も含め)企業の生き残りは企業の責任です。

    EU諸国そしてアメリカさえ農業には、日本以上の補助金が流れていると聞いています。勿論食料確保とか地域社会や文化の保護などいろいろな名目で税金が使われているのでしょう。まあ農業関係者の政治的影響力が強いのは、日本と同じだと思います。結局は関係者の利益誘導ではないでしょうか。

    確かに政治の役割として国民の食料確保が大事です。しかし記事にも書いたように食料を備蓄しておいて凶作に備えた方が安心だと思います。毎年1兆円を農家に所得補償したところで自給率は50%に達するかどうかも怪しいです。

    仮に民主党がマニフェストに掲げた第一次産業に対する戸別所得補償の相当額毎年1.4兆円を全て輸入穀物の購入と国家備蓄に充てるとします。それ程の金額を毎年充れば、数年分の消費量は用意できると思います。その場合世界的凶作で輸入がストップしても数年国民は備蓄を取り崩すだけで飢えを凌げるのです。その間数年かけて国内でイモやカボチャ栽培による自給率100%を目指せる時間的猶予がありますし、数年たったら世界的凶作も過ぎ去っているかもしれません。

    現状のように食糧備蓄が2ヶ月分程度の場合、輸入がストップしたらその年から自給のための生産量を確保できなければ、1年目にして餓死者が出ます。想像するにおぞましいことですね。

    また凶作の原因が日本列島の火山噴火による降灰であったなら、食料自給率を上げるという目論見は大きく狂います。噴火の規模によっては国内の農地がしばらく使えなくなる可能性もあります。
    端的に言うと国内の農家もそう当てに出来ないということです。

    そうです、「だめなもんはつぶせ」こそ私の主張です。

    グローバル化を否定して生きていける国も幾らか存在するでしょう。しかし日本は違うと思います。たくさんの資源を輸入して快適な生活を送っています。輸入がしたいなら、輸出で稼がねばなりません。鎖国したがっている国に自由貿易を強要するのは悪いことだと思います。しかし貿易で利益を上げたい国同士が交渉するのは、当事者に限ってグローバル化は利益の方が大きいと考えていると判断していいのではないでしょうか。

    発展途上国の失業率が高い原因は、グローバル化というより人口爆発にあると思います。

  12. ano のコメント:

    何を言っているんだ、この猿。

  13. 佐藤健 のコメント:

    >通りすがり様

    度々のご訪問有難うございます。
    通りすがりさんの示される「お題」が難しいので全てには上手く反論出来ませんが、お許し下さい。

    リスク・デメリットとその対策・反論について。
    物資を外国に依存するリスクについてですが、まず思いつくのは世界的凶作による穀物不足です。対策としては豊作で相場が低迷しているのときにたくさん備蓄しておくことがいいと思います。
    1億2千万人の食料生産を、この狭い国の農地の毎年の収穫に期待するのはリスクの低減になっていません。
    鉱物資源も同様です。こちらの場合は、課税によって国内の採掘や消費量自体を減らすことも有効だと思います。(もっとも鉱物資源は日本に余り存在しないので外国に依存するしかないのですが)
    安い工業製品は、世界の有り余る労働力で出来ているのですから依存してもリスクは少ないのでしょう。有り余っているのですから安いのです。

    国内の農業の守りたいと考えている立場の人の主張に「農業の多面的機能」というものがあります。農業は生産的な意味だけでなく、景観を美しくしているとか洪水の被害を小さくしているなど様々な側面があるというのです。洪水防止機能だけで3兆円以上の価値があるそうです。

    私は貿易障壁で農業を守ることによって、日本中を保全するという考えには反対です。日本の人口は今世紀半ばまで3000万人も減少します。現在の人間の活動領域を全て守る必要はありません。住む人の少なくなった所から移転を即し、どんどん自然に返していけばいいのです。人が居なくなれば、もう荒れるに任せていいのです。

    >日本の国益を第一に考えるのが当然ですよね?
    もちろんそうです。ただ関税を相互に撤廃しても結果的に輸出が縮小し輸入ばかり拡大した国が出てきたら、その国の通貨の価値が落ちて行きいずれ輸入も困難になります。そうなると「勝ち組」が自国の利益ばかり追求できたのも一段落となります。
    TPPでもFTAでも国家の主権を永久に放棄する訳ではありません。一方的に儲けて仕事を囲っているばかりなら相手に逃げられてしまいます。

    さて貿易障壁の撤廃は、GDP、経常収支そして雇用にどんな影響を与えるか。私には皆目検討がつきません。TPPの条件について全く交渉は始まってませんから事情に詳しい人でも現時点ではなんとも言えないはずです。農産物の分野だけ限って即関税0%なら何兆円と言う単位で貿易不均衡が是正されるでしょう。しかし段階的に年月をかけて関税を引き下げる場合や、工業製品の分野などは一体どうなることやら…。
    逆に正確な分析がなされて、どこどこの国は雇用が必ず減るなんて確定的なことになったら、まとまる話もまとまらなくなりますね。

    デフレについてですが貿易障壁を無くしたからといって、未来に渡って延々と物価の下落が続くとは思えません。現在でも石油資源は激しい値上下があります。
    また個々の人間も家庭環境の変化があったり、命も無限ではありませんから物価の動向がどうであれいつまでも買い控えはしません。

  14. sonokomaggie のコメント:

    こんばんは。

    僕のコメントに対して、しっかりと対話してくれるのはすごくうれしいです。
    けれどわがままを言わせてもらえば、対話なり議論なりをするときは、とりあえず相手の論理に乗ってみるのは、有意義な対応のような気がします。

    中野さんの批判をするなら、それは中野さんの論理に乗り、その中で矛盾を指摘しないと有意義なモノにはならないと思います。

    中野さんの論理は、雇用の問題なら公共事業で対応しよう、農業の問題なら外国の圧力を利用するんではなく国内で対応しよう、というように、ある問題には正当な対応をもって事に当たろうよ、という意味で戦略をまず立てよう、と言っているのだと思います。

    食料の備蓄云々というのは、佐藤さんのグローバル化による繁栄を受け入れるなら当然、グローバル化による衰退を認めよ、という論理から出てきた意見ですよね。

    でもその論理が正当性を持つのは、日本の関税率がどこよりも高いという場合に成立するのではないですか。農業の件だけにこだわれば、アメリカとのTPPよりも、農業小国とのFTAを強引に推し進めるべきではないですか。そうすると、確かに日本の農業は壊滅するかもしれないですが、それは農業分野に限定されて、国内産業の被害を最小限に抑えることができます。そうしてその対応として、食料備蓄をするというのも一つの手段になり得ると思います。

    とりあえず、戦略的に経済問題を考えると、中野さんの論理は支持せざるを得ない考えのような気がしますが。

  15. 佐藤健 のコメント:

    >sonokomaggie様

    こんばんは。ご意見有難うございます。まだまだ私は中野剛志氏の説に対する理解と批判の仕方が上手くないと思います。
    食料備蓄伝々は、書いていて自分でもクドイなぁと感じてはいました。コメントを寄せてくださるほとんどの方が食料の自給を主張されるのでついチカラが入りました。

    不器用なので中野剛志氏の論理に「乗る」というのは出来ませんが、矛盾と思うところを付け加えておきたいと思います。
    中野氏の主張はTPPでは輸出・雇用は増えないということですが、途上国との賃金格差が存在する以上現行の関税水準を維持しても日本国内の雇用は脅かされます。経常収支が黒字のままなら、これまた円高で賃金を割高にする要因になります。
    中野氏はアメリカの関税が撤廃されても為替相場の方が影響が大きいということも言っていますが、ならば(中野氏が高くないという)日本の関税が撤廃されてもやはり同じではないでしょうか。確か中野氏の主張には購買者の視点とともに為替相場を安定させる方法が欠けているかと思います。もちろん本質的には日本がたくさん海外から儲けたら、たくさん海外で使うという以外に解決策はありません。
    日本の経常収支の現状の観点から考えると、農産物の輸入が増えるばかりかもしれないTPPより例外品目が認められたり農業小国との二国間交渉で行けるFTAを優先するというのは「円高維持戦略」です。円高のため、例外品目の産業以外の国内の雇用が脅かされます。
    また中野氏はドル安でアメリカは輸出を促進すると言う一方で、ドル高になったらアメリカから高い穀物を買わなければならないと危惧します。適正な固定相場なるものが無い以上、安くても高くても悲観するのは矛盾していませんか。
    中野氏は(日本が既に開かれた国であるという意味で)日本の関税は既に低いと指摘していますが、もしそれが正しいのなら、例外の無い関税撤廃が原則のTPPで日本は自国の低い関税を無くす代わりに相手国の高い関税を取り払うことが出来ます。つまり中野氏の主張はコメ農家を中心とするごく一部の高率関税で守られた業界の利益であり、日本全体の利益とは言えません。

    中野氏への批判と言うより菅首相の「平成の開国」へのケチになるかもしれませんが、そもそも日本にとって自由貿易とは雇用を増加を約束するものではないはずです。グローバル化は平たく言えば世界的分業ですから、仕事の能率が上がります。世界全体の経済的効用が増加するのに労働時間は減ることもありえます。一部の人にしわ寄せが来ると失業です。
    現在仕事を確保している本人そして「顧客」の視点では、必ずしも「ワークシェアリング」で上手く行くとは思えません。即効性のある失業対策とは結局国内で富の再分配で生き抜けるようにすべきだと思います。生きがいは賃金労働以外に探したらいいと思います。

    日本の雇用は公共事業で増やすべきでしょうか。
    大手のゼネコンに入って「設計」をしたがる人は多いでしょう。しかし現場の建築作業となると別です。
    「エコカー補助金」を出して遊休設備を稼動させるのは有効でしょうか。
    トヨタ自動車を筆頭に完成車メーカーは学生の就職先として大人気です。でも部品の製造現場は多くの日系ブラジル人が担うキツイ仕事です。
    戸別所得補償を受けるほど政治的に優遇されている農業はどうかというと、収穫作業のアルバイトがなかなか集まらない為、研修生という名の中国人労働者を使っています。

    先進国と途上国では失業の理由にも明らかに格差があります。我々先進国の国民は仕事を職種・待遇で選り好みしているのです。仕事や雇用の数が少ないわけではありません。
    どうしても国内で提供されなければならないサービスなら、労働者の待遇を上げて誘導すべきです。

    輸入して済む物を、わざわざ外国人を連れ込んで日本人が寄り付かない劣悪な条件で生産させるのは端的に言って悪徳です。
    貿易障壁を無くせば、輸入で済ませるべきものがその通りに実現していくのではないでしょうか。

  16. sonokomaggie のコメント:

    こんにちは。
    やっと書けました。

    中野さんの主張だけでなく、佐藤さんの論理も考えてみたいと思います。

    佐藤さんの論理をまとめてみますと、

    効率化 → 産業の活性化と淘汰 → 輸入の増加 → 経常収支の均衡化 → 円高是正

    全然まっとうな論理ですね。
    そうして効率化によって淘汰された産業を海外産業で代替する。そのための、「グローバル化 = 相互依存 = 世界的分業」にすればいいということですよね。また、国内では既得権益が無くなるということで、様々な政策対応がやりやすくなるということもあるでしょう。

    こうすることで、既得権益に対する不満も、国内の仕事の選り好みを止めれば外国人をわざわざ入れることもなくなるかもしれません。

    問題は、「世界分業不成立」状態時にはどう対応するか、ということです。
    ここは議論の余地があり、中野さんの論理を非難することが可能な箇所でしょう。現代のインフラ技術の発達の下、グローバル化が停止するということはあり得ないでしょう。
    しかし、今現在の「グローバルインバランスの問題」というのも、紛れのない事実です。

    僕の考えは、
    グローバル化の推進 → グローバルインバランス(不均衡状態) → ブロック化(内需拡大・保護主義) → バランスの均衡化 → グローバル化の推進

    というようなサイクルになって欲しいな、と思うわけです。
    必要なのは、中野さんがしつこいほどに言及している「戦略的に政策を実行しろ」という主張です。「規制緩和はデフレ脱却後にしろ」ということです。

    僕が佐藤さんの主張に違和感を覚えるのは、「日本は効率化しろ」と一方的に主張していると思えるからです。で、海外諸国も同様に効率化しているのか、という疑問です。

    自由競争の名の下、日本は経常黒字です。アメリカは、国土、資源、人口、政治力が高く、EUは域内関税が低く、中国は低賃金の人口の大きい国です。そして、日本は政治力・外交も弱いといわれています。その中で日本はすばらしすぎるほどの結果を残しています。どう考えたって、日本の関税や国力、他国への影響力は相対的には低いとしか思えない中で、この成績。

    自由競争の名の下に勝利しているんだから、何の文句があるのかと。「だめなもんは淘汰されろ」というのなら、淘汰されるのは日本ではなく諸外国でしょう。
    そうして、「世界分業という名目で稼ぎすぎだから規制緩和します」というのはおかしい。海外がお願いして、日本は大人の対応で「分かりました」というのなら不満ながらも分かりますが。

    アメリカよ、軍事費をもっと減らせ、医療費の高騰を何とかしろ、訴訟の多さによる非効率化を何とかしろ、もっと原油生産を増やせ。中国よ、軍事費を減らせ、環境にもっとカネを注ぎ込め、著作権問題を何とかしろ。EUよ、EU関税制度を何とかしろ、環境税を何とかしろ、EUという枠組みを作ったんなら、その枠組み内の非効率国の面倒をちゃんとみて、金融危機を何とかしろよ。韓国よ、世界不況のたびに他国にすり寄るな、海外出国者を何とかしろ、韓国海外進出企業は韓国国内にもっと還元しろ。

    とまあ、日本以上に非効率的な箇所はあるわけです。

    だとしても、中野さんの考えではどうしても経済はうまく回転しないですね。それは確かだと思います。たとえ戦略的に云々といっても、経済の効率化は絶対ですよね。

    中野さんの主張を修正するとしたら
    ①効率化は絶対だ
    ②しかし日本は今、風邪を引いている
    ③だから、「規制緩和」という全力疾走を促したとしても、ますます健康不良になるだけだ。④風邪を引いている日本はまず風邪を治すことこそが最大の「効率化」だ。
    こんな主張をすべきなのかもしれません。

    そして佐藤さん、佐藤さんの主張に対しては、
    ①日本べらぼうに頑張っている
    ②海外諸国の非効率な箇所もどんどん修正しないといけない
    このような見方も必要に思います。

    僕の立場は「日本万歳」で、その態度も問題だが、「潔癖な日本」を求めることもなんか問題があるように思えます。

    そして最後の問題。

    <輸入して済む物を、わざわざ外国人を連れ込んで日本人が寄り付かない劣悪な条件で生産させるのは端的に言って悪徳です。
    貿易障壁を無くせば、輸入で済ませるべきものがその通りに実現していくのではないでしょうか。>

    うむ、正論ですね。

    中野さんのデフレ論に対しても、反論になりますね。輸入を増やすことで円高是正、競争力のない産業はなくなる。

    ちょっくら農産物の自給率低下について調べてみました。食糧供給自体は問題ないと言える意見も多々あるようですね。また、ほぼ100%輸入に頼っている石油についても、分散化と備蓄により対応できているし、また、究極的に言えば、石油が止まるなら今現在の日本の存立も無理だから、食糧だけ無理に拘る必然性も無い。

    ・・・・本当にできると思ってますか?

    ①「富の再分配」と「自由主義」、いったいどのような制度設計を考えているんですか。海外進出企業は競争に勝ち抜くために投資を繰り返さないといけない。留保など考えれませんが。それにもし、日本の強さの一つである「作業の摺り合わせ」「現場主義」というものが、経営者と労働者、労働者同士の意思の疎通というモノにあったとしたら、格差の広がりはどんな影響を与えるのでしょう。
    ②淘汰を肯定するなら、競争に勝つ企業はどうしたら成立するのですか。根拠は何ですか。
    ③そうして、その競争力のある企業がどうして日本企業だと言えるのですか。世界市場にとって、別に分業の相手は日本企業でなくて何らかまわないのでは。
    ④本当に、円高は輸入によって解決されますか。円高は海外進出企業が強いことの証拠でしょうから、特に世界同時不況時には日本の輸入は低下し、世界の需要は競争力のある日本製品が売れたとしたら、当然円高になりますよね。だって、92,98,03,09年辺りの円高はどれも世界同時不況の時だったのではないですか。04~07年までは円安ですよね。95~98年までも円安ですよね。
    ⑤石油の他に、様々なモノを分業で諸外国にゆだねたとしたら、いったいどういった国際戦略を考えればいいのですか。例えば、日本がアメリカの対テロ戦争に協力せざるを得なかったのはなぜですか。尖閣問題の時、人質に取られた企業の人がいましたが、食料などを含めて海外に弱みを握られたらどうするんですか。戦争という体感しやすいモノだけではありません。外交というのは、あらゆる条件を有効に使ってこそ有利に運べるわけですが、弱みをどんどん増やしてどのように対処するのですか。

    そして最も考えなければならないのは、今現在です。佐藤さんの世界分業化という考えは、日本も他国と同様にインフレ傾向が定着すれば問題ないのかもしれません。しかし、10年以上もデフレなのは世界で日本だけではないですか。95年の日米構造協議、橋本内閣、小泉内閣、恐らく規制緩和は継続して行われていたはずです。関税は相対的に低く、農業の自給率は40%ともいわれています。規制緩和をし続けてきた結果、慢性的なデフレというのはどういうことですか。

    このように何も分からないのに、関税撤廃という冒険を日本の国民が受け入れるという考えがおかしいと思いますが。

  17. 佐藤健 のコメント:

    >sonokomaggie様

    こんばんは。
    もともとのエントリーよりも遥かに丁寧な文章をお寄せ頂き大変恐縮です。
    私の方は思うままにダラダラ綴るだけですが、お許し下さい。

    さて世界の経済的不均衡の問題は、貿易障壁の撤廃と為替相場への不介入である程度解決できると思います。発展途上国とも相互に市場を開放すること、経常黒字になったら結果的に生じる自国の通貨高を受け入れて輸出抑制と輸入拡大に任すことで調整されます。
    もちろん理屈どおりに事が運ぶとは限らず、世界市場で全く相手にされない国も出てくるでしょう。そんな国は関税復活するなり鎖国するなり再び世界市場から距離を置けばいいと思います。
    日本としては、エネルギー資源が輸入できる分だけ外貨を獲得しなければなりませんので世界と付き合い続ける必要がありますが。

    もし中野剛志氏が「規制緩和はデフレ脱却後にすべき」と考えているなら、それは時間を浪費し世界の発展から取り残される結果しか残さないと思います。
    新興国は今まで先進国が得意としてきたモノ・サービスの提供をどんどん低価格で実現するようになっています。日本が新興国と同じ様なものを生産している限り、日本の労働の価値が下がるのは当たり前のことです(日本が風邪を引いているいう表現には賛成できません)。規制で労働の価値を守ろうというのは上手く行かないと思います。
    労働の価値を下げたくないなら、新興国とは違うことをしなければなりません。
    物価下落で困るのは、海外から安く買えるものを自ら生産して生活を立てようするからです。そういう意味では、特に価格差のある農業分野にこだわるのは矛盾しています。(もっとも中野氏は食料の安定的確保を念頭に置いているのですが)

    ところが中野氏の輸入品の流入を阻止して既存の産業・雇用を守るという考えは、取りも直さず新興国と同水準の仕事を残すと言うことに他なりません。
    残念ながら競争的な環境に置かれないと、なかなか人(産業)は変わろうとしないものです。
    例えばコメ農家なら転作や廃業(農地の譲渡)をせずに相変わらずコメを生産し続け、売れ残ったら国が買い取れとか「甘えた」ことを主張しています。

    公共事業も通行量の少ない地方の道路を整備するような支出では、日本人の労働の価値を上げることにはならないでしょう。単なる地方への財産贈与であり、失業対策という「足踏み」です。

    一部の人々に紙幣を増刷してデフレ状態を解消しようという考えがありますが、老後の生活資金が預貯金に偏っている人やマイホーム購入のための頭金を貯めている勤労者など、何ら責任の無い人の資産を目減りさせる側面があります。
    また、ちょうどいいインフレ水準というものを実現できるかどうかも不明です。
    もちろん紙幣の増刷という手法は、競争相手とは違う物・良い物を提供するという王道から外れています。

    中野氏の例外品目目当てのFTAとは、例外品目業界のための戦略的政策です。

    私は労働時間は短い方が良いし、安い物が買いたいし、国産品に限らずに希望の物を選びたいと思っています。だから自国には経済的効率を追求して欲しいし、外国に対し開かれた国であって欲しいです。

    他人(他国)もそれほどこの考えと変わりないと思いますが、私は外国で暮らす予定も無く他所のことはどうでもいいです。貿易障壁さえ無くしてさえくれれば。

    ともかく自由、公正、効率を重んじる国のほうが、閉鎖的だったり複雑な規制が存在したり恣意的な政治介入の多い国より発展しやすいと思います。
    国際的な競争で生き残れるのが確実なのは、より効率的にお客さんを喜ばせる国のほうです。

    TPPでもFTAでも相互に貿易障壁を撤廃するのですから、一方的に日本の産業が淘汰されると決まったわけではありません。
    また規制緩和(市場開放)は、消費者本位で勝者を決めます。決してイヤイヤ外国製品を購入したりしません。規制緩和しても市場シェアはほとんど変化無しという可能性も無くは無いです。全ては買い手次第です。
    例えGDPが減ったとしても日本全体としては、より良い商品を手に入れたり同じ商品をより少ない労働時間で買ったことになります。

    最後にsonokomaggieさんからの「お題」に対し思うところを少々ですが書きます。

    ①富というものは、企業の所有であれ究極的には株主たる個人のものです。会社の株主にでも従業員にでもお金が支払われた時点で課税できます。
    土地のような固定資産には、債務超過状態でも課税されなければなりません。納税できなければ没収です。そして「淘汰」されます。
    もし職場と労働者を結びつけるのがお金だけでしかないなら、終身雇用の崩壊とともに作業の摺り合わせも上手く機能しなくなると思います。

    ②③貿易障壁がある現段階でも世界的規模で商売を成功させている企業の例は無数にあるので、その現実の前で私の意見など不要でしょう。

    ④為替相場の安定は、経常収支の均衡以外に無いです。また思惑による通貨の売買を統制しようとするのも筋が悪いです。介入しようとする当局の相場観が結果的に間違っているかもしれないのですから。

    ⑤アメリカに協力したくなければしなくてもいいのです。ただしアメリカで商売がしにくくなるでしょうけれど。どこか海外の一部の市場を失うだけでは世界的分業に背を向ける理由にはならないと思います。

    また今まで懸命に輸出していたはずの相手が売らない態度をとるというのは、相手もムリをしているのです。そう恐れることは無いと思います。
    貿易の拡大は相互に依存を深める訳ですから、一方的に弱みを握られるのではありません。

    日本国内の物価の下落の原因を内外価格差の縮小あるいは消費者の趣向の変化と捉える私のような立場では、現在流通しているモノ・サービスの値段が上がるべきだと言う前提をとりません。物価の下落は追認できる当然の帰結です。
    そもそも日本人と新興国の賃金格差を考えれば、一介の日本人労働者にとってデフレなど悩むに値しない現象です。

    私に予想がつかないのは、水田が荒廃した後の治水への影響です。
    失業についてはコメ農家の場合、そもそも農業収入を当てにせず別の職業を兼業していたり、もう高齢のため引退もおかしくない人が多いです。あるいは農地が都市に隣接しているところは、馬鹿にならない潜在的価値があるので処分すれば生活費に充てることが出来ます。もっともコメ農家や畜産業者の転職を特別注目する筋合いはないはずですが。
    現在でも低い関税で世界の相手と競争している(一部の農業分野も含めた)企業や購買者本位では、関税撤廃を拒絶する理由など皆無です。

  18. sonokomaggie のコメント:

    やっぱ、佐藤さんの意見が正論ですね。

    例えば、佐藤さんの論理を「世界分業体制」としてみて、その方法を「規制撤廃」としてみます。「環境対応」という言葉にも言い換えれるかもしれません。

    この考えは、文化も言語も異なる国や人との交流を「是」、不正や非効率性を「非」とすることで、様々な価値観をうけいれるという、理想とすべきものですね。

    規制を止めるんだから、何かが淘汰されたらそれを必要とする人が作り出せばいいわけだし。

    僕が色々、国家戦略とか複雑な為替について「難癖をつける」とも取れるような反論をしても、机上の空論ですね。

    世界では非効率性や不正である現状の方が、効率化された状態よりも多いのでしょうし。

    考えるべきは、「まもる」ことではなく、「対応する」ということでしょうね。

    けれど、三橋さんや中野さんの態度に惹かれてしまうなあ。学者の東さんや堀江さんや大前 研一、野口悠紀雄はどうも。

    はあ、現実と好みの乖離にまた悩まされるのか。

    いろんなことを考えるきっかけになりました。
    ありがとうございます。

  19. 佐藤健 のコメント:

    >sonokomaggie様

    こんにちは。
    こちらこそ、お付き合い有難うございました。

    私もグローバル化に伴う、物価・地価の乱高下、地球環境破壊の問題そして数年間隔で突発する金融危機は大問題だと思います。それはそれで対策が必要ですね。

    また中国のように人権は二の次三の次、不遇の国民からなりふり構わず労働力を搾り取る国が実は競争に一番強いのかもしれません。
    すると関税の撤廃だけで日本は世界的競争に生き残れると考えている私は間違っていることになります。

    長期間に渡り日本経済全体として「売り上げ」の減少に悩まされています。処方はともかくとして、三橋貴明氏や中野剛志氏が物価下落を憂うのは日本の大部分の経営者・サラリーマンの苦しい立場を正面から受け止めています。
    私のような自由放任自然淘汰主義は、彼らに対し余りにも冷たいです。

    言い方は悪いのですが、三橋氏らの主張は日本をゆっくりと安楽死させる良い方法ではないでしょうか。
    私の主張する競争主義で必ず勝てるわけではありませんし、競争から生じる急激な社会の変化は、失業に伴う家族の崩壊や自殺を増やします。私の主張の消すことの出来ない影の部分です。

    「ホリエモン」。言ってることは必ずしも賛成できませんが、彼の懸命かつ奔放な生き方にはとても憧れます。

    sonokomaggieさん、長文で丁寧なコメントを多数下さり、本当に感謝しています。

  20. hiro のコメント:

    はじめまして、お邪魔します。
    本論と違う部分で申し訳無いです。

    次のように意見されていたと思います。
    ・食料は自給できなくなっても、国が輸入して常時備蓄すれば大丈夫
    これに関してなのですが

    どの品目を備蓄すると良いのでしょうか?
    数年分の備蓄となると、保存が利くものに限定されると思います。

    危機に無い平常時、(この期間がもっとも長いと思いますが)限界のきた備蓄品をどの用に処分するのでしょうか?
    関税を撤廃し自由貿易にすることで、海外から安く新鮮な食料が必要以上に輸入されている状態なのだと思います
    (今の日本も不必要なほど食料を輸入していますよね?それが促進される形になると思います)
    既に安すぎる値段でそれらを供給されている日本人にとって、さらに安く備蓄を放流したとしても、それが受け入れられるでしょうか?
    TPPを結んでいる農業国にタダ同然で逆輸出してもいいかも知れませんが、先方が悲鳴を上げそうに思います。

    また危機の時です。
    備蓄でしのげる数年で、国内農業力を向上すれば良いと主張されていたように思います。
    既に畑として機能する土地は無くなっており、専門家もいない状況です。
    どの程度の期間で自給率100%付近の農業力を保持できるまでに成るでしょうか?
    逆にいうと、それを達成可能と見込める期間分、備蓄していることが必要と言えます。

    農業の近い将来像として想定できる一つの形に林業があると思います。
    輸入材を広く受け入れた結果、日本では木が安くなりすぎて、次の世代の材木を作るために手入れをすれば完全に赤字になるのだそうで、放置された山が所々で問題になっています。
    食えないなら、この産業は潰れたら良いし、手入れされなくなった山は自然に帰るので問題ないのでしょうか?

    手入れされなくなった山は、保水力が弱り洪水が(手入れの行き届いた山に比して)頻発しているそうです。
    日本の山はもう大半が、人間が作った人間にとって都合のよい山になっています。
    これは放置されると廃墟のように荒れ果て、人間にとって不都合な状態になるようです。
    非常に長い時間の果てに、完全に自然に帰りすばらしい山になるかもしれません。
    しかしそれまで不都合を感受できるものでしょうか?
    似たような現象は、農業では起こりえないでしょうか?

  21. 佐藤健 のコメント:

    >hiro様

    はじめまして、コメントをお寄せ頂き有難うございます。

    価格の面で備蓄の対象は穀物に違いないでしょうが、ではコメと小麦をどういう割合で貯めればいいのかは私も断言することは出来ません。
    hiroさんの御指摘の通り、毎年変動する購入価格の他に保存の費用も考慮しながら備蓄品目の割合の変更を重ねていくべきでしょう。

    そして備蓄期間の限界が迫ってきたものは、タダ同然で処分するしか無いと思います。仮に毎年一年分の消費量の備蓄を積み増していくなら、数年後にその一年分全てが処分の必要に迫られます。とても国内だけでは有効に始末できそうにありません。
    経済の中からこぼれ落ちた貧困の国・地域に贈与してもいいですし、内外の畜産業者が飼料として引き取ってくれるかもしれません。
    商売として取引が成立するなら、引き取り先の事情はそう心配しなくてもいいのではないでしょうか。お互いに貿易障壁を取り除いて好きに売買するのがTPPなのですから。

    >今の日本も不必要なほど食料を輸入していますよね?

    そうです!昨今の食料自給率は40%なんて言われてますが、実は日本人が絶対確保しなければならない食料は現状の2.5倍なんてことはないでしょう。

    まず数年の備蓄を用意しても持ちこたえられられない世界的食料危機が起きる可能性は、それよりも期間の短い1年程度の規模の危機よりずっと低いはずです。

    現行の自給率40%と食料備蓄2ヶ月分という体制では、比較的短期間の世界的食料危機にも国内の生産力増強を迫られます。増産に失敗したら餓死者が出るという危機がより多く巡ってくるのは当然食料備蓄が少ない方です。

    もし食料危機が日本国内の自然現象に起因するなら、国内生産の増強による食料確保は絶望的でしょう。
    食料を国内の耕地で賄おうという考えの持ち主は、世界に散らばる穀倉地帯の生産量の合計が足りなくなることを想定しても、同時に日本も凶作になるとは想定していないようです。(世界各地で天候不順が起きても日本は平年どおりが当たり前?)

    確かに、耕作放棄された畑に木が林立するまで荒れてしまったら、始めから開墾のやり直しです。農作物の育て方を知る人が皆無になったら、試行錯誤しているうちに備蓄が尽きる可能性も高いです。

    しかし生きていくには食べるのが一番重要ですから。食料の確保を最優先に労働力が割り当て耕地の回復は急激に進むと思います。
    また民主党の始めた農家の戸別補償制度は申請農家が百数十万戸にも上るそうですが、農業の技術を継承するためだけならこんなたくさんの人数は不要です。
    一人当たりの耕地面積はアメリカが日本の百倍です。オーストラリアは千倍以上だとか。ならば日本の99%以上の農家は廃業して耕地を他の農業者に譲ってくれた方が食料生産の効率がいいと思います。

    それでもhiroさんが疑問を呈するように数年で自給率を100%に引き上げることに失敗する可能性もあるでしょう。
    ただ上で述べたように、どちらかというと備蓄量が少ない方が危険に多く遭遇し国民の命を脅かす確率が高いと私は考えています。

    >保水力が弱り洪水が(手入れの行き届いた山に比して)頻発しているそうです。

    洪水の被害を緩和など農林業の多面的機能は難しい問題です。
    洪水を防ぐなら、山間地の田畑はどんどん森林(出来れば広葉樹)に復元された方が良さそうです。
    一方で材木供給のための針葉樹を育てるのは経済的に行き詰ったところから止めるしかないでしょう。人手も確保できないのですから。
    また生活用水の確保さえも困難になることがある地域は、ダムを作ったらいいと思います。
    人口が減少に向かっているのですから、ダムの用地買収は以前より容易になっていくでしょう。
    政治的な介入で山間地の過疎化(田畑の耕作放棄)を防ぐというのには賛成できません。

    日本の人口が今後40年で3000万人もの人口が消滅するのはほぼ確実です。比較的厳しい生活環境の土地は放棄し、生産性の高い場所に集まって暮らすべきだと思います。

    自然と人間社会の境ではhiroさんの言うようにいろいろ不都合(不快)なことが発生するでしょうが受忍するしか無いと思います。人口が減少していく過程とは自然の勢力が増していくことでもあるのですから。

    ただし人口が減少していけば、国民一人当たりの使用できる土地や水資源は多くなります。
    ですから食料確保という観点で、日本は潜在的に安全な国へ移行していくことが可能なのではないでしょうか。

    hiroさんのコメントで、私の考えの浅いところを改めて気付かされました。有難うございます。また機会がありましたら忌憚ない指摘をお寄せ下さい。よろしくお願いします。

  22. hiro のコメント:

    ご解答いただきありがとうございます。

    >>商売として取引が成立するなら、引き取り先の事情はそう心配しなくてもいいのではないでしょうか。お互いに貿易障壁を取り除いて好きに売買するのがTPPなのですから。
    国が主体でこれを行うことさえも承認されるものなのでしょうか?
    ※ダンピング呼ばわりされるような気が…

    日本国が唐突に備蓄用の食料の輸入を始めた場合、1億2千万人分の需要が発生します。
    対象物の価格は上昇すると考えられます。
    TPP関連諸国では農業従事の人口が増え、供給力が増し、いずれ価格が落ち着くかもしれません。
    しかし、数年後、日本国が型落ち食品を驚きの安さで(TPP各国に)輸出し始めます。
    ※この間に食料危機が無ければです。
    今度は穀物価格が下落すると予想できます。
    そのとき、増えてしまった農業人口を各国は減らすことが出来るのでしょうか?

    TPPのアメリカ・オーストラリア・ペルー・ベトナム・マレーシアの人口はざっくりで
    アメリカ 3億1千万
    オーストラリア 2千万
    ペルー 3千万
    ベトナム 9千万
    マレーシア 3千万
    で4億8千万です。

    新規備蓄分の輸入をここから調達するなら
    需要が急速に125%まで上がり、(日本国内の農業生産が順次壊滅することを考慮すると)継続的に伸び続けると思われます。
    ※日本の自給率は40%との事ですから、きれいに壊滅すれば最終的に130%以上に
    TPP加盟国は関税のない日本に優先的に輸出すると考えられます。
    未来予測は3点可能で
    A. 生産力は特に増えず食料が暴騰し、貧国で食料が不足する
    B. 農業従事者が増え生産力が上がり、需要を埋め合わせてしまう。
    C. 遺伝子組み換えや農薬まみれの粗悪品大量生産で凌いでしまう

    Aの場合は世界中から反発されて、思うように食料備蓄は出来なくなるように思います。
     国内農業が壊滅し輸入による備蓄も出来ない困った状況に陥るかもしれません
    Bの場合は日本が売りに転じた際に、相場が暴落する恐れがあります。
     しかも、この売りは待ったなしです(なにせ順次腐ってしまうので)
    Cの場合お金持ちで優良客の日本は相手を選べますから、粗悪品を掴まされるのは他所だと思いたいです..
     稀少になってしまった品質の高い部分を日本が「備蓄」してしまい、貧国に出回る粗悪品量が増えます。
     また、いずれにしてもBの結末が少し緩和された形で訪れると思います。

    わき道逸れすぎました・・・ 一連のコメントは

    TPPで農業が壊滅すると言うが、競争力がないなら無くなって良い
    無くなると食料危機に対応できないというが、余分に買って備蓄すればいい

    この論はどうなのかなー? っといった「疑問提起」として頂ければ…

  23. 佐藤健 のコメント:

    >hiro様

    こんばんは、コメント有難うございます。

    ダンピングとは一時的に不当な安い値段で販売して、競争相手を排除することが目的です。不味くなりつつある備蓄食料をタダ同然で、輸出向けの生産のない国が放出してもダンピングには該当しません。
    あくまでも放出するのは、古くて比較的価値の低下した分です。そして代わりに新しく高い価格の食料を購入して備蓄の補充をするのですから、海外の農業者にとって損な話ではありません。

    hiroさんはTPP参加国を基に取引先の想定なさっていますが、国家備蓄の調達はTPP参加国に限定されません。輸入関税の課税前で安い価格のところから順に買ってくればいいのです。
    それは政府の調達なら輸入関税は障害にならないからです。結局その税収は政府の懐に入るのですから。

    農産物の内外価格の格差、そして何より諸外国の輸出意欲の存在こそ世界に生産余力がある証拠です。暴騰は天候不順となって生じます。そのときの為に備蓄が必要なのです!

    hiroさんは大量の備蓄が穀物価格の変動を引き起こすことを心配されているようですが、そもそも穀物相場は毎年激しく変動しています。
    むしろ相場に応じて安い穀物を大量に購入しておくことは、農業者を穀物相場価格の低迷から守り歓迎されることのはずです。

    食料問題そして環境問題は、既存の産業の従事者数を所与としないで、少人数で効率的な生産をする(買うのが割安なら生産をやめる)ことが解決方法のひとつだと思いますがいかがでしょうか。

  24. hiro のコメント:

    >>不味くなりつつある備蓄食料をタダ同然で、輸出向けの生産のない国が放出してもダンピングには該当しません。
    うーん。つまり実行しても国際的に通用するということでしょうか?

    >>あくまでも放出するのは、古くて比較的価値の低下した分です。そして代わりに新しく高い価格の食料を購入して備蓄の補充をするのですから、海外の農業者にとって損な話ではありません。
    これは需要が生産力に対して十分だった場合ですよね?
    1. 今まで供給力100の100の需要だった
    2. 日本が農耕をやめ、備蓄を始めたために供給力95の125の需要になった
    2. いくらでも売れるため生産者が増え供給力125の需要125になった。
    3. 日本が備蓄の放出をはじめた。供給力155で需要125となった。
    ※需要増25、供給減5の根拠は前回のコメント
    日本の放出分は無制限に安価に出来るため、全て消費されると考えると
    生産国の生産者の19%ほどは在庫が捌けなくなると思うのですが…
    TPP内で余るならTPP外に売ればよいのでしょうか?
    でもいくらでも売れる先があるなら、そもそも日本に関税を撤廃せよ!
    なんでいってこないと思いますよ?
    農業関税はそのままで、日本の売りたい品目だけ関税撤廃のTPPだって実現できるはずということになります。

    >>国家備蓄の調達はTPP参加国に限定されません。
    ではなおさら状況は深刻です。
    1. 供給力100、需要100ののところに
    2. 他所で購入した日本の備蓄分放出開始で、供給力125、需要100となります。
    25%程度が処分に困ることになるかと…
    因みに購入先はTPP外だったとしても、放出先は100%TPP内です。
    なぜなら関税が無いたいめです。
    関税があると、たとえ0円で売ろうとしても、その国内では国内生産品より高くなるかもしれません。
    しかし関税を完全撤廃したTPP諸国向けならその心配はありません。

    >>hiroさんは大量の備蓄が穀物価格の変動を引き起こすことを心配されているようですが、そもそも穀物相場は毎年激しく変動しています。
    この論法で行くと、何をやっても問題ないという所に行き着きませんでしょうか?
    私の論の展開としては「この振れ幅が、さらに大きくなるだろう」だと思っております。
    対して「そもそも穀物相場は毎年激しく変動しています」の解答では少しすれ違っている感がありました。
    ※そうでは無い場合はすみません。

    >>食料問題そして環境問題は、既存の産業の従事者数を所与としないで、少人数で効率的な生産をする(買うのが割安なら生産をやめる)ことが解決方法のひとつだと思いますがいかがでしょうか。
    私は世界の食糧生産能力が人口に対して不足しているとは思っていません。
    佐藤様のおっしゃるように、天候被害による単年の不足はあっても、需要があるなら生産していない国でも生産できるわけですし、長期的な不足は無いと思っています。
    効率の悪い農業が横行できているのだとしたらそれは需要が無いためです。
    関税撤廃によって日本国内生産が無くなれば、それがまかなっていた分の供給力が減ります。
    また、同時に国が輸入によって備蓄を始めるのも純粋な需要増加です。

    今現在、供給が飽和していて、世界的に食料は安くなりすぎている!ならいいのですが
    拮抗しているところに多量の需要が流れ込むと
    それこそ、一時的に世界中で悪天候になったのと同じ効果を演出するはずです。
    あわてて生産力を増やしたところに、今度は、日本が輸出に転じます。
    そうすると過去に増加した需要分が相殺された形になります。
    この場合、世界的に豊作に成りすぎた、のと同じ効果を及ぼすでしょう。
    域内農家は大きな打撃をうけると思います。
    大変動を乗り切ったあと、結局は始める前と同程度の需要に戻ってしまいます。
    ※日本がTPP外から備蓄を購入した場合は悪化します。
    これをTPP加盟国が受け入れるでしょうか?
    話が違う、それは不公正取引だ!と(日本の備蓄放出に対して)声が上がるように思います。
    仮に加工食品にして販売しても、仮に貧国にあげたとしても、その分の需要を食いつぶしているという点で、問題は解消しません。
    八方美人で外圧に弱い日本は、「ごめん。これは捨てることにしますわ」ってなことになりませんか?
    問題点はこの部分だと思っています。

  25. 佐藤健 のコメント:

    >hiro様

    こんばんは、コメント有難うございます。

    hiroさんは説明しやすいようにだと思いますが需要に応じて供給力が増強され維持されると仮定していますね。
    しかし農産物の供給力は一定ではありません。(だから備蓄を主張しているのです)
    また価格を下げれば需要が増加します。

    古々々々々米と新米では価値が違います。古々々々々米には、不味くてタダ同然の価格にならざるを得ません。恐らく貧しい人の食べ物になるか、または家畜の飼料になるのでしょう。新米の消費先とは違います。不味い米が美味しい米の需要を同じ分だけ侵食するなどありえません。
    仮に備蓄分の放出がそれと同じ量だけの新米の需要を奪うとしても、その不味い米を数年前に新米として販売し利益を得ているのですから、農家は全く損をしていません。

    hiroさんは日本が備蓄を開始した当初の「特需」とその後のバランスをご心配なさっているようですが、特需にどう対応するかは個々の農業者の判断です。どれだけ事業拡大するかなど放っておけばいいのではないですか。どのみち長期的には農業者全体で売り上げを落とすことなどないと思います。

    なぜ日本に市場開放を迫るのかと言えば、海外と比較して日本の市場では米の値段が格段に高いからです。自国よりや発展途上国よりも高く売れるのです。足りないから売れる、または足りているから売れないということでは無いと思います。

    購入・販売の市場範囲がより広くなれば、状況が深刻になるとは考えられません。

    古米の処分先もTPPに限りません。もちろん少しでも利益の多く出るところから古米の輸出先候補になるのでしょうが、そこの市場が飽和状態になったら別のところを検討せざるを得ません。
    国内で廃棄や無償譲渡をするより若干でも経費が削減できるなら、TPP参加国に販売を限る必要はありません。

    なおTPP参加国同士でも、輸出しようとする物がTPP域外で生産されたものなら関税は掛かるかもしれませんね。

    >私の論の展開としては「この振れ幅が、さらに大きくなるだろう」だと思っております。
    対して「そもそも穀物相場は毎年激しく変動しています」の解答では少しすれ違っている感がありました。

    仰るとおりですね。答えになっていなかったです。
    比較的相場が高いときは少量の調達で、相場の低迷しているときは大量に備蓄すれば相場の振れ幅は小さくすることができます。
    大量に備蓄する局面で農家に恩恵があり、凶作で備蓄を放出するときに国民全体が恩恵を感じるはずです。

  26. こせがれ  のコメント:

    はじめまして。
     稲作農家のこせがれです。

    TPPの問題を考えてました。ほぼどこのメディアを見ても農家vs輸出産業みたいな図式でいわれてますが、私としては正直、TPPでもなんでも有りだと思います。
     農業はこの先、急速に高齢化が進みますし、法人化して大規模に経営しているところは米価の低価格で補助金(生活保護)がないと続きません。それでも止まれないから常に規模拡大を考えてます。大規模に展開すればコストが下がる工業製品と自然相手の農作物を同じ土俵で考えているからそもそも矛盾があります。
     農協は農家を守るための組織のはずが、今ではただの悪徳流通業者です。安売りするスーパーには野菜は卸しません。くらいの事をしていればTPPに反対する理由が分かりますが、自分たちの在庫がさばけなくなるとコメの収穫直前に大量に在庫処分してまた米価を下げる。もう農家には体力が無い状況です。農協はただ組織を守るためにTPP反対しているだけです。納得できません。
     
    いままで何一つもまともな政策をしたことの無い全敗農林水産省や組織の保身だけを考える農協はもう潰したほうがよっほどましです。補助金という麻薬漬けの農家はもうこの時代いらないでしょう。
    企業もダメなら潰れるし補助金目当てや自立できない農家は一度清算したほうが未来が明るい気がします。 その地域風土にあった共同体を再構築していくことが必要だと思います。

    意外と田舎の農家はTPPの話題すら出ないようで、金が無くても食べ物だけはあるからそんなに困らないが本音だと思います。都会では金がすべてですからTPPで困るのは大都会の人たちかなと思います。
     農政や農協の逆を進むしか生き残る道はない!!
    巨大になった恐竜は絶滅しました。だがネズミは生き残りました。時代がどう変わっても柔軟に対応できる経営センスが必要です。

     

     

  27. 佐藤健 のコメント:

    >こせがれ様

    はじめまして、ご訪問有難うございます。
    まさか稲作農家の方からコメントを頂けるとは思っても見ませんでした。

    お言葉ですが、工業もサービス業も少なからず競争のせいでそれほど計画通りに利益が計上できる訳ではありません。同じ事を繰り返すだけなら、どんどん消費者が遠のいていきます。コメの消費量の低迷と価格低下とそう変わらないと思います。

    こせがれさんの御指摘のとおり農協が役に立っていないと言われれは、そうかも知れません。
    しかし海外からコメ(ミニマムアクセス米)を大量に買わざる得なくなった現状で、相変わらず余るほどコメを作り続ける農家というのも消費者無視ですね。
    私のような「持たざる者」は、利益が出ないのにコメを作り続ける(比較的零細な)コメ農家の気持ちが分かりません。

    農村の共同体というのは再構築というより、もう崩壊していくのではないでしょうか。
    多くの若者たちが都会に出て行ったり、今後の国の財政的支援もそう期待できそうにありません。そもそも農業の大規模化が進めば、人手はずっと少なくて済むはずです。

    カネがなくても食べ物だけはあるからそんなに困らないのが本音とは、農家とは大変たくましいものですね。
    確かに大都会でも、輸入品に取って代わられるような人は多くいるに違いありません。まあ消費者本位の結果ならそれでいいと思います。これから日本はどんどん労働力人口が減少していくのですから。

  28. ゆとりしんきんぐ のコメント:

    亀レス申し訳ありません。
    回答いただきありがとうございます。
    ブログ主様のおっしゃる通り、貿易収支の黒字は外国からすると迷惑なもので、相応の輸入をするべきというのにはその通りだと思います。
    問題なのは輸入増加の方法です。
    外需に頼って経済成長、その対価として輸入を受け入よう、というのがTPPの目的ですよね?
    しかしそうではなく、内需を拡大して、それによる自然増加で輸入も増やそう、ということだと思います。
    そのためには、デフレを退治して個人消費と投資を活発化させる必要がある。
    よって、デフレを深刻化させる自由貿易はこの場合「公正」ではないというロジックではないでしょうか。

  29. ゆとりしんきんぐ のコメント:

    連投すいません。
    輸入が増えない、というのは書き方が悪かったです。
    輸入全体としては増えないと書くべきでした。
    また、購買力の低下と書いたのは、TPP加入で主に入ってくるのが低価格な農産品だということを想定していたからです。
    安い農産品は当然外食産業で使用され、低価格化します。
    牛丼が200円などになると他の外食産業も低価格競争をするしか道はないでしょう。
    その際に削られるのは人件費ではないですか?
    生産者だけでなく、関連のサービス業従事者の賃金が低下するのは予想できることではないでしょうか。

  30. 佐藤健 のコメント:

    >ゆとりしんきんぐ様

    確かに内需が拡大していけば多少輸入が増えても当面失業者は発生せずに済み、丸く収まりそうですね。ただ今世紀半ばにかけて日本の人口が3000万人も減少する見込みなのに、内需拡大などに期待を寄せていいのでしょうか。

    低賃金の新興国が日本より安値でモノを供給する以上、同等のモノの価格下落は避けられません。新興国の国民と同等のモノを作っていながら、自分たちだけは高いままで売ろう(昨今のデフレの退治とは結局そういう意味でしょう)というのは土台無理があります。
    貿易障壁を立てて世界の相場から目を逸らすという方法もあります。しかしその間もどんどん新興国の産業が力をつけて日本の産業の相対的価値が落ちていくと思います。競争に参加するなら早い方がいいです。
    新興国からの輸入で済むようなモノを生産して「デフレ」を嘆いても仕方がありません。相対的に有利な産業が伸びていくことこそ日本が生き残れる唯一の方法です。
    原材料の仕入れ価格低下自体が、サービス産業従事者の賃金低下につながるとは思えません。仕入れ値の低下を悲しむ従業員の話など聞いたことがありません。低価格競争が過熱するのは、需要の減少・供給の過多です。
    (原材料費の価格が上がっても、それを仕入れる産業の従事者の賃金は上がりません)

    牛丼の例はともかくとして、ゆとりしんきんぐさんの御指摘の通り自由貿易がサービス産業の賃金低下を引き起こす結果をもたらす事例が必ず発生するでしょう。

    しかし日本全体として、新興国よりずっと高い賃金水準や低い失業率を保ちたいなら新興国の国民とは違うことをして成功するしか無いと思います。
    貿易障壁は根本的解決に全く役立ちません。

  31. 三つ子のおやじ のコメント:

    はじめまして、米農家です。
    難しくてあまりよく解りませんが、これだけは言えます。
    TPPに参加してもしなくても、ある程度の農家は淘汰されていきます。
    佐藤さんは、参加してなすがままながれに乗れと言うように聞こえます。
    数年の備蓄など現実的では無いし、ましてや米自体が外国、(とくのアメリカ)から大量に押し寄せてくるなど私は無いのではと思っています。
    グローバルと言いますが、世界的にグローバルになれば、世界的に平均的価格になると思います。
    佐藤さんが仰るとおり、中国の米価格は一万円前後です。
    アメリカでは五千円前後、日本は一万三千円が平均です。
    あくまで平均です。
    私の地域は八千円です、所得保証などがあって一万円です。
    規模拡大、経費削減、栽培技術の革新などで七千円位では経営できるようになりました。

    この間、アメリカで米を作っている人に話をする機会がありました。
    アメリカやオーストラリヤでは作物より水問題が深刻だそうです。
    水代や水田が高く売れる為、投機対象となりこのままでは米の値段を上げざるをえないそうです。
    いろんな会議に参加して感じた事は農家でも様々な機関の方でも情報が乏しくて、判断できていないのが現状です。
    私みたいに参加不参加以前に今こそチャンス、と捉えている人もたくさんいるはずです。
    くさい事ですが、どんな状況であってでも信念をもって土作りをして食べてくれるひとに美味しいと言って貰える米を作っていくのが農家の努めだと思っています。

    個人的にはTPP賛成です。
    長くなりすいませんでした。

  32. 佐藤健 のコメント:

    >三つ子のおやじ様

    はじめまして、コメント有難うございます。
    米農家の方ですね。丁寧に具体的な米価格まで上げて頂き恐縮です。

    三つ子のおやじさんのご教示して下さった数字によると、規模の拡大が出来れば所得補償など受けなくても外国産に負けない感じがします。
    政府による保護や、消費者に対して高コストのツケを回すことがないなら大歓迎すべきですね。

    TPPの詳細は交渉中あり決定していないのですから、情報が乏しいのは当然です。
    もっとも私は購買する方の観点で、TPPであれFTAであれ例外の無い関税撤廃が日本の為になると考えています。(一部のマスコミは米が「例外」になることは日本にとって良いことのように報道しますが)

    『食べてくれる人に美味しいと言って貰える米を作ること』三つ子のおやじさん素晴らしいことではありませんか。農家に限らず働く私たち誰もが本来そう考えて働くべきです。
    市場を開放すると外国に食い物にされるという表現をなさる方もいらっしゃいますが、外国資本だって買い手の気持ちを推し量るはずです。そうでなければ買ってもらえません。(それともそう主張している人こそ、普段顧客を「食い物」にしているのでしょうか?)

    関税撤廃などものともしない三つ子のおやじさんの事業が今後益々発展なさることをお祈りしています。
    長文のコメント感謝です。

  33. 三つ子のおやじ のコメント:

    さっそくのご返答ありがとうございます。
    私の書き方が悪かったのか勘違いしている所があります。
    規模拡大さえすれば海外米に対抗できるのでは?とありますが、そんな事はありません。
    拡大すればそれなりにコストがかかり、リスクが伴います。また、気候や収量に左右されるのが自然を相手にしている、農業の悪いところでもあり楽しいところでもあります。
    わたしは、農産物が(取分け米)自分で価格を提示できない事に疑問を感じている一人です。
    自信を持って作っている作物を相場や国が値段を決めるのはおかしいと思っています。
    工業製品や食料費、衣類にいたるすべての商品は、仕入れ価格に経費を加して定価を決めて商売が成り立っています。
    高コストのツケを消費者が払っているとコメントしていましたが、ひとは何か(誰かに)恩恵を受けないと、生活はできないのではないでしょうか。

    野菜は関税が比較的(十数%)少ない品目です。
    アスパラやブロッコリーはアメリカからの輸入で国内で広まり、国内産が生産されることにつながりました。
    いまや国内産がほとんどを占めるまでになる品目になりました。
    輸入が結果的には国産を拡大する結果になるこんなこともあるのです。
    理由さまざまでしょうが、安ければ誰もが買うのではなく新鮮で美味しい、なおかつ安心安全なものが消費者はもとめている気がします。

    わたしは農業に関してしか解りませんが、平成佐久間象山さんのように経済学的でいえばTPP参加は国内の利益にはならないとマクロなんとかでかんがえれば解るといっていましたが、机上論としか聞こえません。
    また佐藤さんが言うような高い米を売るような米農家はなくなれという意見も私には理解できません。
    市場を開放して、自由に競争させてもらえればそこには努力が生まれ日本人は対処していくと思います。
    その時点で淘汰される者は淘汰されるだろうし、競争力がつけば海外に輸出もできます。
    わたしはその時点で生き残れるのは、日本の米農家だと思っています。

    農業だけが国の助成を受け高い農産物を消費者に押し付けている!
    農家だけを悪者にして自分は国に何も迷惑をかけてなどない!
    さっきも言いましたが、そうではありません、必ず誰しもが恩恵にはあずかっているのです!

  34. 佐藤健 のコメント:

    >三つ子のおやじ様

    他の記事や他の方のコメントまで、お目を通して頂き有難うございます。
    三つ子のおやじさんが規模拡大だけでは対抗できないと言うのならそうなのでしょう。所詮私には海外に対抗する術など分かりません。

    >ひとは何か(誰かに)恩恵を受けないと、生活はできないのではないでしょうか。
    確かに人間は相互依存的であり、そう言えると思います。

    しかし、それだけでは特定の業界を国の補助金や関税で保護する理由にはならないと思います。
    勿論その他のあらゆる業界を、農業のように補助金と競争の制限で保護する訳にもいきません。

    農家が高い農産物を国内の消費者に押し付けてきたのかどうかは、完全自由化しないと本当のところ分かりません。

    まず農家を守るための補助金や貿易障壁が撤廃すること。そのうえで以前の売り上げと補助金額の合計を以前から販売している農作物で売り上げること(つまり補助金廃止に伴う値上げ)が出来たなら、日本の農家は決して高い農産物を消費者に押し付けてきたのではないと言えると思います。

    ただTPPに反対する農家は当然外国産が消費者に選ばれると確信しているから、反対しているに違いありません。TPPに反対している業界の存在こそ、消費者が損をしてきたことを暗示しています。

    消費者の利益を無視して、国内の業界の保護(補助金)を主張するのは農業に限りません。それらの集団は全て悪者です。補助金や貿易障壁の撤廃という洗礼を浴びるべきです。

  35. sonokomaggie のコメント:

    こんばんは。

    TPP論、盛況ですね。

    今回は、TPP論議で違った観点からやりとりしたいと思い、また来てしまいました。

    さて、佐藤さんのTPP論、というかTPP批判と言った方がいいかもしれませんが、どうも、しっくりこないのです。

    佐藤さんの主張である効率化、分業化、規制撤廃、色々言い換えられると思いますが、やっぱり納得いきません。「効率化」は様々なモノに対して正論と言える概念だとしか言いようがないのに。

    ということで、ちょっくら考えてみました。

    とりあえず、これからの話に都合がいいように佐藤さんの考えを「自由化」論としてみます。

    「自由化」、この「自由」という言葉。かつてはこれほどワクワクさせる言葉はなかったと思います。週末、大変な激務である仕事をこなしたご褒美として、計画していた旅行に行くときのワクワク感はたまりません。普段、政治論議なんかできないのに佐藤さんのブログでは自由にコメントを書け、しかも丁寧な反応も付いてくる、もうたまりません。

    大変な戦時態勢が終わった終戦時、生活が落ち着いた後の自由と言ったらたまらないモノがあったと思います。そうそう、こんな短歌がありました。

    「花もてる夏樹の上をああ「時」がじいんじいんと過ぎてゆくなり」 香川 進

    また、高度成長期には様々な製品、海外の文化の流入などなど、「自由」と刺激と幸福感が手をつないでやってきたんだと思います。

    となると、これらの「自由」と今問題の「自由化」、この「自由」にはいったいどんな相違が存在するのでしょう。

    とりあえず、「自由」というものがうまく機能するには「対立軸」や「規制」という人を縛り付ける対象と、「目的」や「方向性」が必要となるように思います。

    なぜに「目的」が必要になるのかというと、「自由」が今ある現実の生活や価値観を壊してしまうからです。

    この「自由」を享受するための「楽しい未来」、いったい「規制緩和」や「自由化」の先にはどんな「目的」があるのでしょう。

    TPP論批判の「合理化」という概念には、何ら楽しみが感じられません。色気がありません。

    かつて日本が海外に打って出た時に引き連れて言ったモノは、「安い」という出来の悪い息子の他に、「コンパクト」というかわいい女の子や、ウォークマンなどの電化製品、乗用車、バイクなどのよく働く出来の良い息子も引き連れて海外を渡り歩きました。

    さて、今現代、中国や韓国、BRICSはいったいどんなモノを海外へ広めているのでしょう。「安い」というものだけですね。

    つまり、佐藤さんの「自由化論」は未来への期待感を何ら喚起しない概念だ、と言う風に感じるのです。

    かといって、内にこもってみてもやっぱり幸福な未来なんか予想できません。

    ということで、僕はこんなもんを提言してみます。

    『地域社会をもっと面白くするために「自由化」「効率化」するんだ。』と。

    これだったら、中野さんと佐藤さんの論理をまとめることができるように思えます。これから、地域社会を創っていくときに果たして完全自由化は有効か。地域社会を創っていくために、対抗手段を持っておくことは有効か。

    このように、自由化にしろ関税撤廃反対という立場にしろ、何らかの目的や楽しいビジョンを提示することで、不毛な議論を終わらせることはできるように思います。

    地域社会での人間関係を強固にして、権力者や金の亡者には斜に構えて、周りの人を思いやる、そんな状況になったら意気な男やおきゃんな女、粋な男や婀娜(あだ)な女が生まれるかもしれません。

    そう、目指すは江戸時代の精神ではないかなと思います。

    追記
    三橋貴明さんや中野剛志さんの論理がどうして支持されるか、これを考えてみるべきでしょう。彼らの論理は、以前にも他の人が言っていることだと思います。にもかかわらず支持されているという現状。

    特に、ネットで支持を表明している人は皆、ある程度のネットリテラシーの元、かなりの判断力を備えていると思います。農業の非効率性や農家の怠慢なんかはいうに及ばず把握しているはずです。中野さんの主張は効率・非効率の問題ではないのです。国家としての、考え方としての論理性、正当性があるかないかの問題なのです。

    効率性なら、国家がうまく機能するための効率性を考えているのが中野さんなのではないでしょうか。

    それと、

    <消費者の利益を無視して、国内の業界の保護(補助金)を主張するのは農業に限りません。それらの集団は全て悪者です。補助金や貿易障壁の撤廃という洗礼を浴びるべきです。>

    これに関してですが、このように反論できるように思います。

    破壊するなら、未来のビジョンを提示しすべし。ただの破壊は悪である、と。

    ・・・・ちょっと、無理があるかな。

  36. 佐藤健 のコメント:

    >sonokomaggie様

    こんにちは、先日はたくさんのコメント有難うございました。

    私の主張している貿易障壁の撤廃は、それ自体幸福感など全く伴わないですね。ただ荒波に乗り出すというだけです。中には始めから「航海」に出るのを諦めて引退し、細々と余生を送るという人も多いでしょう。その先に楽しいことが待っている訳ではありません。

    それでもなお効率化を追求すべきと理由とは、少子高齢化を乗り切るのにそれが必要だと考えているからです。

    今後何十年に渡って労働力人口が減少します。当たり前ですが現在の産業を温存したところで医療・介護などの需要には対応してくれません。

    またこれからも増大する老人保健の分野に公的な関与と財政的支援を続けるのなら、税収の確保も求められます。

    もちろん物質的豊かさや政府による社会保障を求めない生き方を実践する個人・地域があってもいいと思います。もっとも旺盛な金儲けや納税を期待できないそのような集団には貿易障壁・補助金そして行政サービスも本来無関係なはずです。

    私に言わせれば、三橋貴明氏や中野剛志氏の主張は過去十数年日本政府が実行してきたこととそう変わり無いと感じます。歳入を大幅に超過する政策的支出、既存の産業・雇用を利用しようとする守りの姿勢。そして本心かどうか分かりませんが、TPPを推進しようとする菅総理の代でさえ農業を強化しようという建前。

    彼らと政府を一緒くたにして、「楽しい未来」を感じないというのは大雑把過ぎますかね?

  37. sonokomaggie のコメント:

    おはようございます。

    えっと、佐藤さんのコメント、
    「効率化自体幸福感など全く伴わない」
    ということですが、

    痛みの後には良いことがある、という前提の元コメントされたことですよね?

    そうでないなら、佐藤さんの論理の正当性の根拠が分からなくなります。

  38. NAKATA YASUHIKO のコメント:

     宮崎哲弥のトーキング・ヘッズのゲストとして出演なさったを拝見して、私のような老人(72歳)にとっては、近年珍しく、理論だけでなく、生身の人間を考慮した経済論になっていましたので、心強く感じました。貴方様のように若さで流行に流されない人物がいれば、日本も立ち直れる可能性があると思いました。TPPや今回の震災にからむ原発問題に関して、御用学者としかおもわれない、有識者・解説者の大合唱にはうんざりしています。多分、まだ、少数派ではないかと思いますが、頑張って欲しいと思います。
     「人間は、神ではない」
     「森羅万象に通ずる、天才は殆んど居ない」
     「人間は、失敗するのは止むを得ないが、それを教訓とすべし」
     「実行しない為の理由を考えないで、実行すろ手立てをかんがえろ」
     「他人に責任を擦り付けるな」
     「脅しを含む論は、まやかしが殆んどである」
    最近、気になっている事柄です。本日の、論題から離れています事をご容赦ください。
     

  39. ああああ のコメント:

    私は頭も悪く経済の知識も無いので意見を言う事ができないのですが
    今日の朝のニュースで、メディア側の人間がたじろいでたのを観て
    マスコミってのは何の自信も確信も無い事を垂れ流してるだけだと分りました

  40. 佐藤健 のコメント:

    >ああああ様

    はじめまして、コメント有難うございます。
    マスコミは、毎日の番組枠や紙面を埋めることに精一杯なのでしょう。所詮人目を引いて売らんかなということで事を大袈裟に報道しがちな気がします。

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