TPPの受益者

作家・三橋貴明氏は氏のブログ「新世紀のビッグブラザーへ」でTPPを推進することについて『「アメリカのため」としか思えない戦略を有り難がってしまう』と表現している。

中野剛志氏の投稿を引用してTPPの問題点を上げている。
中野氏はTPPをめぐる日本の状況について、
「TPP交渉に参加している国々とは際立って異なる。国際ルールの策定の場では、自国と同様の利害や国内事情を有する国と連携しなければ、交渉を有利に進められない。」
としている。
しかし交渉の成り行きに満足がいかなければ、その時点でTPP参加交渉から下りてもいいのである。交渉を始める前から諦めなくてもいいだろう。

また対米貿易について、
「日本の輸出産業は、為替リスクの回避のためにすでに海外生産比率を高めている。ドル安が続く限り、この傾向はさらに進むだろう。米国での現地生産が進むのであれば、仮に日本がTPPに参加し、米国に関税を全廃してもらったとしても、もはや関税撤廃と輸出競争力の強化とは何の関係もない。」
と主張している。
中野氏はホンダの米国での現地生産比率80%という数字をあげて、「米国」への生産移転の可能性を上げているが、世界の自由貿易が一層活発になればドル安が進む米国よりもっと生産に適する人件費の安い国が幾らでも出てくるのではないだろうか。
日本からにせよ、第三国からにせよ米国に輸出するなら関税は無い方がいいに決まっている。

日本が農産物の関税を撤廃することについては
「仮に将来、米国が貿易黒字を計上してドルが高くなったとしても、いったん失われた日本の農業を関税なしで復活させることなど不可能であり、食料の米国依存がさらに深まるのは確実だ。」
と危惧している。
将来米国が貿易黒字を計上出来るかどうかわからないが、ドル高に転じれば米国産品は競争力を失うので、食料輸出は別の国が台頭してくるはずだ。

中野氏は関税より為替の影響を重視している。
ならばなおのこと円相場の安定のため、大幅な経常黒字状態を改め輸入品を増やさなければなるまい。

米国に限らず全ての国が輸出拡大を目論んでいるに決まっている。
日本も一層の輸出が大事ことに変わりないが、経常黒字国ゆえ輸入拡大も許されるのだ。

関連記事:現在の雇用に拘る中野剛志氏のTPP論

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日本はこれ以上CO2を削減できないのか

先月24日COP16(国連気候変動枠組み条約第16回締結国会議)を前に石油連盟、日本鉄鋼連盟、セメント協会など9つの業界団体が京都議定書延長への反対を表明した。

「…京都議定書は、削減義務を負う対象国が、地球全体のCO2排出量のわずか3割弱しかカバーしておらず、主要排出国である米国・中国・インドが対象となっていない極めて不公平かつ実効性の乏しい枠組みです。」
「京都議定書の枠組みが継続されれば…我が国産業の国際的な「イコールフッティング」が図れない状態が長期化し、経済・雇用にも甚大な影響を及ぼします。…この結果、我が国よりもエネルギー効率の劣る他国の生産増につながり、地球規模でのCO2排出増を招いてしまいます。」
COP16等に向けた産業界の提言 http://www.paj.gr.jp/paj_info/press/2010/11/24-000456.html

確かに今までのようにCO2排出削減を産業界ばかりに頼っていては、日本国内の産業を弱めるだけで他国からの排出を増やしかねず日本にとっても地球環境にとっても悪い結果にしかならないだろう。

ならば産業界に対する締め付けを止めて、家庭に対し化石資源の使用を抑制すればよいのではないだろうか。

京都議定書で約束した日本のCO2削減は1990年比マイナス6%である。(製造業・エネルギー産業といった「産業分野」は目標達成の見込みである)
一世帯あたりの人数が減少し続けているので、かつてより日本全体で省資源の成果を出すのは困難になっている面はある。
しかし数パーセント程度の省資源を実践しても、決して貧困な暮らしに逆戻りする訳でもないだろう。

そもそも地球温暖化対策とは一部の産業に限らず日本を含めた先進国の暮らし方そのものが見直しを迫られている。
今後は個人や家庭こそが痛みを伴ってでもCO2の削減を強いられる番だ。

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国連気候変動枠組み条約第16回締結国会議(COP16)開幕

29日地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP16)がメキシコではじまった。
2012年に期限を迎える京都議定書後の温暖化ガス抑制策を取りまとめることを目指しているが、その合意は極めて困難のようだ。

温暖化ガスの排出抑制を先進国各国に義務付けた京都議定書は温暖化ガスの大量排出国であるアメリカが批准していないこと、そして現在最大の排出国でもある中国が削減義務を負わないことが度々問題点として上げられてきた。
そして「ポスト京都議定書」も米・中が排出抑制義務を負うかどうかが一つの焦点になっている。
温暖化ガス削減の話となると米国と中国はいずれも排出抑制義務を拒絶する温暖化ガス排出大国として一緒に括られることが多い。

しかし同じ大国とはいえ、抱える人口や過去からのCO2排出の累積量を考慮すれば米・中二つの国は事情が全く異なる。
(参考:社会実情データ図録 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4180.html
アメリカは産業革命以降今日まで最もたくさんのCO2を排出してきた国であり、現在一人当たりの排出量も日本人のそれの2倍という多さである。
逆に中国は人口が多いとはいえ歴史的には化石資源の累積消費量が少なく、一人当たりのCO2排出量も日本人の半分程度である。

道義的には、過去から現在に渡って地球温暖化の原因とされる化石燃料をより多量に使ってきた国が責められるべきである。
また貧しい人に対し化石燃料の使用の抑制を要求したところで、期待できる削減幅は僅かだろう。もともと絶対的使用量が少ないのだから。

地球温暖化の大半の責任は先進国の側にある。温暖化ガスの抑制ため犠牲を払う新たな一員となるべきはアメリカ一国ではないだろうか。

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国債発行についてのお気楽な考え

作家の三橋貴明氏は、氏のブログで国債の発行で政府の負債が増えると家計の資産が増えると主張している(ただし強靭な経常黒字国である日本の場合と断っている)。
国債発行によって調達したお金は政府が景気対策などで民間への支出するので、結局家計の資産(現金)が増える。
だから国の借金が家計の資産を上回ることはないと言う。

しかし政府の支出は日本国内で生産されるモノ・サービスの購入に使われるばかりではない。また一旦家計に向かった現金もいずれ消費される際は、必ずその一部が輸入品の購入に向かうだろう。
現金そして国債そのものも外国人の手へ渡る可能性が十分あるのだ。

三橋氏が前提としている「強靭な」経常黒字も、日本が当然にそうあり続けるとは限らない。
もし国債を発行するなら、国内に立地する企業が貿易や海外投資で更に利益を出せるような歳出に当てるべきだ。間違っても過疎地域の道路整備など利用者の数が見込めない投資ではいけない。

三橋氏は銀行の貸出・預金残高の動向から民間の資金需要の無いことを指摘し、そしてその原因はデフレであるという。
デフレを深刻にしないためには「増税」や「公共投資削減」をすることは間違いである、それは「インフレ対策」であるからだと結論付ける。

しかし一口に増税と言っても相続税のように死んだ人の財産を没収するようなもの、また所得税でも預金金利にかかるものなどデフレに影響を及ぼさないものもあるのではないか。

需要が少ないからといって必ずしも政府が事業主体になる必要は無い。
売り上げを伸ばし莫大な利益を生み出している企業なら、法人税減税をはじめとした足かせを減らすことで投資を増加させるだろう。それこそ需要に応える可能性の高い手法であるはずだ。

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民主党 環境税による増税2400億円

■CO2抑制には少なすぎないか
24日民主党税制改正プロジェクトチームが、環境税導入の提言を公表した。
現在施行されている石油石炭税の税率を1.5倍にして増収分を環境税とするようだ。

見込まれる税収が年間にして2400億円。国民一人当たりにすると、毎月700円にも満たない負担である。その負担はガソリン、灯油、ガス、電気に限らずいろいろなモノ・サービスに分散されることになる。
その程度の額で、しかもどんな消費を抑えれば負担を軽減できるのか明確でなければ国民に対するCO2抑制の契機になりえないのではないだろうか。

また民主党税制改正プロジェクトチームは、環境税導入がガソリン代値上げにつながらないようガソリン税の縮小を求めるという。

ガソリン、灯油そしてガスこそCO2の排出源そのものなのだから、値上げをして使用抑制を強いるべきである。なぜガソリンだけ特別扱いするのだろうか。

京都議定書で決められた削減義務である1990年比-6%を2008~2012年の拘束期間に全うするには、もう技術革新による削減手法は間に合いそうにない。

家庭がはっきり痛みを感じ、一層のエネルギー節約の動機となるほどの重さの増税が必要である。
さもなくば、排出権取引による削減義務履行のため外国に莫大な支払いをしなければならない羽目になる。
外国にカネをやるぐらいなら、少々エネルギーを節約して我が国の政府に支払ったほうがいいではないか。

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ハンセン病療養所「大島青松園」官用船の民間委託先送り

26日厚生労働省は、国立ハンセン病療養所「大島青松園」のための官用船運行の民間委託を先送りにすることとし、関係者に通知した。

今まで2隻の官用船の運行に携わってきた国家公務員6人の内2人が今年度末に退職するのを機に1隻を民間委託にする方針であった。

対し療養所入所者や彼らの弁護団が反対したと言う。
端的にいうと政府直営や国家公務員による運行は信頼できるが、民間人の商売は信用ならないということのようだ。

結局政治的判断で厚生労働省側が一旦民間委託の問題を先送りにすることになった。

しかし船舶の運航もそうであるが、そもそも様々な分野が民間企業の活動範囲でありその責任を果たしている。
そして元々国の事業であったものでも電電公社や国鉄そして郵便局までも民間企業として経営形態を変えつつある。もちろん民間企業として活動した方が国民的利益があると判断した上での流れである。

ハンセン病患者やその弁護団の主張は、正当な根拠のない官尊民卑的な差別であり不愉快だ。

民間委託の良否の判断は、これから必要とするサービスとそれに掛かる費用だけを勘案して下すべきではなかろうか。

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農林水産省の食料安全保障 不測時における取り組み

APEC開催が迫った頃からTPP(環太平洋戦略的経済提携協定)が話題になっているが、農業分野の関税引き下げが見込まれるゆえ政治家の間でTPP参加への賛否が分かれている。

TPP参加を反対する側の言い分が「食料安全保障」である。
彼らは国民に対し安定的に食料を供給するために、食料を平時からなるべく国内で自給すべきだという主張をする。

では、そもそも海外からの輸入が途絶えた場合、国民全ての食料を国内生産で確保するのは可能なのか。

農林水産省が、不測時における取り組みとして想定した「熱量効率を最大化した場合の国内農業生産による供給可能量」という試算がある。
国内の農地で何の作物をどれだけの割合で生産すれば国民の必要カロリーを満たせるのかをまとめている。
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/pdf/neturyou_kouritu.pdf

試算は3パターン上げられているが、国民一人当たり2000kcal以上摂取できるようにするための共通点がある。
●コメに替わって、サツマイモやジャガイモの類が主食になる。
●休耕地のみならず、水田の一部がイモ類の栽培地に転換される。
●野菜・果実の生産は、それぞれ現状の1/3、1/2.5しか生産できない。
●牛乳・乳製品・肉類・鶏卵などは現状の1/4~1/7しか生産できない。

端的に言って畜産業の存在は食料安全保障という観点からすると、大部分は邪魔になる。そして1億2千万人の人口を養うことが出来るのは、コメでなくイモなのだ。

食料不足が生じた際の備えとして、既存の農業や畜産業をそのまま保護しておくのは無駄が多いのではないだろうか。
必要なのは、即農地に転用できる状態の土地、水、そしてタネイモなのだから。

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農林水産省試算 TPPで壊滅する畜産業者

EPA(経済提携協定)・FTA(自由貿易協定)そしてAPEC開催直前まで話題になったTPP(環太平洋戦略的経済提携協定)締結によって日本が世界に対し関税を撤廃した場合、国内の産業にどんな影響を与えるか。
農林水産省が国境措置撤廃による農産物等への影響試算について(品目別)生産量減少率と生産減少額をまとめている。
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/pdf/19_hinmoku.pdf
生産減少額が圧倒的に多いのはコメである。減少額は1兆9700億円に上る。
そしてコメに続くのが豚肉、牛肉、牛乳乳製品である。
それぞれ4600億円、4500億円、4500億円の減少である。
生産量減少率は順に70%、75%、56%。

牛肉は4等級と5等級が残り、そして豚肉は銘柄豚だけが残り後は全て輸入品に置き換わるという。
さらに牛乳乳製品の品目では、鮮度も考慮されるであろう飲用乳でさえ2割が置き換わると見込んでいる。
包括的経済提携に関する資料・農林水産省試算の補足資料によると、飲用乳も輸送技術の発達で輸入が可能なのだそうだ。
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/pdf/siryou3.pdf

貿易障壁を撤廃して、価格・品質といった消費者の視点によって生じた結果ならば公正である。

国内畜産業者を保護してきたというのは消費者から選択の自由を奪って高い製品を押し付けてきたということである。またそもそも肉を余り食べない一部の国民にまで畜産業に関わるコストを転化してきたという側面もある。

例えば今年の春から夏にかけて宮崎県で広がった口蹄疫は、国の多大な税金や人員の投入を受けて処理された。また周辺地域は感染拡大を防ぐ為に交通の規制も受けた。
もし牛肉・豚肉が全量輸入であったら国民はそんな費用や行動の制約を課されずに済んだはずである。

消費者に高い買物をさせた上、業界内で発生する問題を自らの費用で解決できないでいるなら畜産業界は衰退した方が日本全体のためになるのではないだろうか。

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死刑判決 裁判長が控訴勧める

男性2人を殺害、切断遺体を遺棄したとして強盗殺人罪などに問われた事件の判決が16日横浜地裁で言い渡された。裁判員制度がはじまって2例目の死刑求刑であり裁判員裁判初の死刑判決が下されるかと注目を浴びていた裁判である。

しかし今回異例だったのは裁判員制度初の死刑判決という他に、裁判長が被告人に向かって控訴を勧めたことだ。過去にも自ら死刑判決を下した裁判長が控訴しなさいと付け加えた例があるが、極めて珍しいことである。

今回の裁判の朝山芳史裁判長は、
「被告は公判で『いかなる判決も受け入れる』と述べたが、重大な結論なので、慎重に判断すべきと考える。控訴することを勧めたい」と説諭したという。

「疑わしきは被告人の利益に」と刑事裁判の原則が表現されるように、刑事裁判の判決は冤罪を防ぐため証拠に基づいた裁判官の確信から下されるものである。
そして量刑を決めるに当たっても、証拠が示す事実から乖離して良い訳ではない。

裁判の進行は裁判長が決める。最終的に刑事裁判の検察側の証拠や主張が信用するに足りないなら、訴えを退けるしかない。
今回の事件に対し朝山裁判長は「被告に酌むべき事情を最大限考慮しても死刑は回避できない」とも言っている。

ところがなぜ一審が終結した時点で有罪判決を言い渡した裁判長自身が被告人に控訴を勧めるのだろうか。

有罪判決を下した裁判長が控訴を勧めるというのは、自分の裁判の進行に慎重さが欠けていると言っているようなものである。
それでは被告人のみならず控訴審を担当する関係者もたまったものではない。他人がいい加減にした仕事を始めからやり直しさせられるようなものだ。
手続き上控訴審さらには上告審が一審より効力を持つが、それは地裁の犯罪の認定や量刑を決める能力が低いことを意味するものではないだろう。

もし集めれるだけの証拠を元に審議を尽くしたうえで判決を言い渡したなら、控訴の勧めは余計なお世話だ。

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農林水産省試算 TPPで壊滅するコメ農家

EPA(経済提携協定)・FTA(自由貿易協定)そしてAPEC開催直前まで話題になったTPP(環太平洋戦略的経済提携協定)締結によって日本が世界に対し関税を撤廃した場合、国内の産業にどんな影響を与えるか。
農林水産省が農林水産物全体への影響について試算した。
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/pdf/siryou3.pdf

その中で最大の影響があるのが「コメ」である。
国内の生産量にして90%減少するというからほとんどのコメ農家は壊滅必至だ。

農林水産省は端的なシナリオを記している。
「外国産米の価格は、国産の1/4程度(内外価格差4倍強)であり、品質格差も今後の品種転換等により解消可能。」
「米国では、輸出量が現在約400万トンあり、これにアジア諸国等の輸出量を含めると我が国の生産量を上回る水準。」
「国産米のほとんどが外国産米に置き換わり、新潟コシヒカリ・有機米といったこだわり米等の差別化可能な米(生産量の約 10%)のみ残る。」

つまり海外のコメ輸出国は既に格安なコメを日本の全消費量分を供給する能力を持っている。そして今後さらに美味しくなり国内産のコメはほとんど不要になるいうことだ。

資料によると、外国産と競合する国内産のコメの価格は1キロ当たり247円。対し外国産は57円としている。

去年の日本人一人当たりのコメ消費量は、58.5キログラムである。試算どおり消費者が値下げの恩恵を受けられるなら、約1万1千円得することになる。4人家族世帯なら4万4千円の得だ。

振り返ると、今まで国家の食料安全保障などと言う名目で国民は高い買い物を強要されてきた。

しかし海外から輸入すれば国内産の4分の1の価格で手に入るなら、一年以上の消費量に相当するコメを凶作に対する備蓄用として余分に購入しておくことも不可能ではない。
むしろ日本国内の凶作の危険を勘案すれば、備蓄をして食料不足に備える方が確実な食料確保策ではないだろうか。

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