都市農業は無い方が都市空間を有効に使える

参院選のマニフェストでは都市農業の振興を自民、公明、共産そして社民党まで訴えた。
しかし、都市では農業するよりずっと有効な土地利用が幾らでもあると思う。

全国の農業総産出額は年間約8兆5千億円ほど。耕地面積の合計は461万haである。1㎡あたり年間200円に満たない生産額でしかない。大都市なら、未舗装の月極駐車場でも十倍以上の賃料を得ることが出来るだろう。農業というのは、都市のあらゆる商売に比べて土地の利用効率の悪い事業なのだ。

平成21年度 食料・農業・農村白書によると、三大都市圏において都市農業の全経営耕地面積1万4千ha ほどあるという。戸建住宅が何十万戸も建つ面積に相当する。
三大都市圏の中には合計すると広大な農地が存在する一方で、農地以外の都市空間では国民がウサギ小屋と自嘲したような狭い住宅がひしめく。
白書では都市農業の農地を災害に備えたオープンスペースの確保、「やすらぎ」や「うるおい」をもたらす緑地空間の提供という意味づけをしている。しかし農地の存在のせいで都市の有効利用が妨げられ災害に弱い住宅密集地が広がったのではないだろうか。

土地の所有者が何に使おうが勝手と言えばそれまでだが、効率の悪い商売を国が助長してはいけない。

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地産地消は買い物の言い訳にならない

先の参院選では民主、自民ともに地産地消の推進をあげていた。すでに農林水産省も施策に移っており、22年度では地産地消の推進に僅かだが41.4億円の予算がついている。
しかし地産地消は国が旗を振るほどのこととはとても思えない。

まず政府が地元産農産物を地元で消費するよう仕向けるというのは、取引の自由を妨げることになる。
例えば民主党は学校や老人ホームの給食に「地産地消」を進めるとしているが、学校や老人ホームの経営者にも購入費用を抑えたいという都合がある。地元産の食材でないという理由で不利な立場に置かれる他所の生産・販売業者も困るだろう。

平成21年度 食料・農業・農村白書には
地産地消は、地域で生産された農産物を地域で消費することによって、生産者と消費者を結び付けるとともに、消費者の食や農業への理解促進にもつながるものです。また、食料自給率の向上や地域農業の活性化につながるだけでなく、輸送エネルギーコストの削減等、環境面にも資するものであり、
と記されている。
輸送エネルギーにだけ言及して環境によいというのは、怪しい主張だ。輸送以前に生産の段階で資源をどれだけ投じているかも検証しなければいけない。
また、農家や流通業者の取る利潤が多ければ多いほど、後の彼らの消費生活が贅沢になり、彼らの暮らし自体が環境に負荷を与えている可能性も大きくなる。
大雑把に言えば、高い値段の付いている食品はそれなりに環境を汚染することになる。

つまるところ買い物は自分の趣向や健康そして財布の中身と相談して決めさえすればそれで良いのだ。

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所得補償してまでの農家の保護は不用

農家に対する戸別所得補償制度は食料自給率の向上と農村地域の暮らしを守るということが目的という。既に民主党政権が制度を23年度から実施することに決定した。

今まで水田として利用してきた農地で、コメから別の作物の栽培へ転換することを奨励しコメ余りの解消と自給率向上を狙っているようだ。
しかし、一般的に商品の需給は政府が介入せずとも、割に合わないと考えた供給者が市場から退出したり、儲かると予想した新規参入者が現れたりして調整が利く。

農林水産省の発行した戸別所得補償モデル対策パンフレットには
食を自国で確保することは大切です。しかも生産に伴って国土や、水、緑を守り、その恩恵は私たちみんなが受けています。だから農業は私たちが守っていかなければならない「産業」なのです
と国を挙げての保護の正当性を主張している。また、
 農業の多面的機能とは、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承など農村で農業生産活動が行われることにより生じる、食料やその他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる(外部経済効果)機能のことをいいます
と農業の社会的役割を別の角度から捉え、擁護している。
しかし、日本の水、緑を守るというより、森林を切り開き、水を消費するのが農業ではないだろうか。国土の保全、景観、文化といっても農村周辺のことに過ぎない。農村のために農家を守れと言っているように思える。

黒字化の見込みのない農家は廃業して、その土地は他の者が利用するか、さもなければ放って置けばよい。
消費者はカネで他所から買うだけで済むのだ。

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食料自給率向上より、お金持ちであることが重要

食料自給率の向上とは食料の安定供給の確保のために、国内の農業生産の増大を図るという方針だ。(食料・農業・農村基本法第2条)
農林水産省が推進するだけでなく、民主、自民、公明から共産、社民まで与野党すべてが食料自給率向上を参院選の公約に掲げ、少なくとも表向きには異議がないように見える。

しかし、食料自給率は100%に達しない限り、不足分は海外から調達しなければ国民の生活は維持できない。また天候不順で収量が大きく変動するのは国内の農業も同じだ。普段生産過剰であったコメでさえ1993年の不作時に輸入に頼った。遅かれ早かれ似たような場面は今後も生じるだろう。

結局輸入の可能性が捨て去れないなら食料自給率の向上より高い所得水準を保つ方が、全ての日本国民の生活を守るには有効である。
食料そのものが存在しないと安心できないなら、需給が緩いとき輸入品を国内に備蓄するという方法があるし、市場が低迷している時の購入は供給元も助かる。
結局ここでもカネが物を言う。最後は食料自給率ではなく国民の所得水準が命を救うのだ。

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農業は廃れてくれた方が、国民の生活が楽になる

農林水産省の生産農業所得統計によると、全国の農業の所得の合計は約3兆円にすぎない。
そんな小さな規模の業界に対し、参院選で各党はこぞって支援の公約を掲げた。

しかしこれからの将来のある若者は国の財政的な支援を受けて付加価値の低い仕事に就くくらいなら、別な商売を目指してもらいたいものだ。

コメ農家保護のための輸入制限で、日本の消費者は海外の安いコメを手に入れる機会を狭められている。はっきり言って日本の消費者は農家のせいで高い物を買わされ損しているのだ。

農産物を聖域にせずどの分野の商品も自由な貿易が出来る状態にさらして、消費者に支持された事業者だけ生き残ればよい。農業は人手だけでなく、広大な土地を占有する。外国産を買ったほうが安上がりなら人材も土地も他の目的に投じるほうが有効である。もともと都市近郊では以前から土地は不足しているし、少子高齢化で労働人口も将来逼迫することが案じられているのだから。

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最低賃金引上げには失業が伴う

公明党、共産党そして社民党などは、回りくどい言い方で最低賃金1000円を参院選の公約に掲げた。
生活保護との均衡を図り、全国平均1,000円をめざし最低賃金の着実な引き上げを図ります(公明)
全国一律の最賃制を確立し、当面、時給1000円以上を目標に大幅に引き上げます(共産)
中小企業に十分に配慮をしつつ、最低賃金(現在、全国加重平均で時給713円)を段階的に時給1000円以上へ引き上げ、ワーキングプアをなくします(社民)

公明党の言うとおり、働かず生活保護で自治体からお金を貰っている人と勤労者との均衡を図るなら、生活保護の現金給付額を抑えて現状の最低賃金で働く人以下にすることでもいいはずだ。

共産党は全国一律の額を主張しているが、大都市の相場に近づければ田舎の雇用主は最低賃金を守れず廃業するか、従業員が違法を承知で最低賃金未満での雇用を懇願するになるだろう。

社民党に至っては中小企業に配慮しつつ引き上げるそうだが、企業に配慮するなら不況のときに賃上げなんか提案できる訳ないではないか。

法定の最低賃金を上げさえすれば、すべての労働者が楽になるという単純な話ではない。国がそれを強制するなら、結局最低賃金未満でしか稼げなかった国民を生活保護で守らなければならない羽目になる。最低賃金の額を上げれば上げるほど、保護の必要な国民の数と配るお金の総額は多くなるはずだ。
その用意が政府にないなら、賃金水準引き上げの強制は国民にとって酷なだけだ。

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インフラ産業だけ助成しても、関係のない産業は迷惑

日本の経済の発展のため、鉄道や原発そして水道などの社会基盤となる設備の輸出に期待する向きがある。参院選の各党の公約にも散見されるし、日本経団連も主張している。もちろんその業界が伸びること自体は喜ばしいことだ。しかし輸出先の国に対し、特別に低金利の融資をしたりODA(政府開発援助)を抱き合わせたりしてまでそれらの業界を助成するのには反対だ。

現状では、日本は貿易収支が黒字である。特に黒字を大きく稼いでいる品目は、自動車、電子部品、鉄鋼などインフラ産業以外の商品である。それらを含め現在の輸出産業の売り上げが今後頭打ちになったり、縮小に転じる確固たる理由はない。将来どの産業がより多くの黒字を稼ぐのかあるいはインフラ産業が特別に儲かるのかは分からない。
ならば特定の産業に肩入れをするより、全ての産業が恩恵を受ける政策を打った方が公平である。経済の拡大は、企業の努力と消費者の支持が決めること。政府が恣意的にある企業を支援するというのは、支援していない企業から徴収した税(資金)を支援企業に移転するのと同じだ。それは企業にとって不公平であり、社会全体にとっても最適な資源配分を損ねる可能性も高い。

端的に言えば、企業の発展のために政府がすべき金銭的支援は法人税減税だ。どの会社にも等しく恩恵があるので何といっても公正だ。

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日銀にデフレ解消を期待するのは間違い

参院選の選挙公約に、政府・日銀でデフレ対策に取り組むことをあげている党が複数あるが、そもそも物価の下落を国主導で防ぐことが出来るかは疑わしい。

物価下落の原因としては、新興国の工業が発展し従来日本で生産してきた商品がより安い価格で輸入出来るようになったことが何より大きい。それは新興国と同様の商品しか生産できない労働者の失業につながる。日本国内の労働者が余るようになれば、新興国の産業と直接競合しない業界も値下げ競争が起こるようになる。

新興国の圧倒的に強い点は、先進国の数分の一という格安賃金だ。たとえ日銀が金利を0%にしたところで、価格の差を埋め合わせることは出来まい。そして消費者という立場では、同じ品質のものならなるだけ安いものを求めるに決まっている。だから日銀がお金をタダで貸そうが配ろうが、結局国籍問わず安く売る産業が支持させる。

世界の経済動向の趨勢に日本が無縁ではいられない。日本国内の産業が世界の中で埋没すれば、その生み出す製品・サービスの価格そして賃金は必ず下がる。所詮中央銀行の金利の上げ下げだけで、その国の産業や労働者の給料の価値を守ることなど不可能なのだ。日銀に景気の浮揚は期待すべきでない。

政府・日銀にデフレを解消する方法がひとつある。それはお札をどんどん印刷して国債の償還なり、政府の新たな歳出なりに当てることだ。政府や一部の固定金利の債務者にとっては、一旦借金が棒引きになったり負担が軽くなることを意味する。一時的に彼らは大喜びだ。しかし増刷された通貨が多すぎれば、物価上昇は必要な輸入品の高騰にまで及ぶ。円で貯蓄を持っている多くの国民の財産は必ず目減りするはずだ。

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サッカーワールドカップ招致反対

サッカーの2022年ワールドカップの招致を日本サッカー協会と大阪市が目指している。そのためのスタジアムの建設も予定しているという。
ワールドカップを直に観戦したいサッカーファンもたくさんいるだろうし、スタジアム建設など誘致に伴う商売をしている企業にとってもまたとない機会だ。

しかし、自治体にとって招致と開催にかかる様々な費用は馬鹿にならない。東京都は2016年オリンピックの誘致活動に150億円費やしたそうだか、もしかしたら同じようなリスクを大阪市が負うことになるのではないか。
誘致に成功すると自治体の支出以上に税収が見込まれるのか、それとも大阪市内の事業者が開催にこぎつけるための財政支出額を超える価値(利益)を生み出すのか。
利益を得るのは、一部の事業者だけで、大阪市民の多くはスタジアムでの観戦もしないし自治体の財政は好転しない気がする。2002年日韓ワールドカップで使用された横浜国際総合競技場は総工費600億円、年間維持費約5億円もかかっているのだ。そして横浜市はスタジアムの赤字に頭を悩ませている。
なおメイン会場となるスタジアムの建設費は1000億円とみられ、大阪市は国に費用を拠出してもらうつもりのようだ。

オリンピックもそうだが、他の国の引き受け手がいる。まだ日本より貧しく失業率の高い地域の場合もある。先進国はそのような地域に任せられる事業は譲るべきだと思う。
大阪市も含め大多数の日本の自治体は財政難なのだから、誰も引き受けてくれない問題だけ取り組むべきだ。慢性的な介護施設不足の解消が典型例である。サッカー観戦と違ってほとんどの人が多少なりとも世話になる問題である。また介護制度は一過性の景気対策ではなく、高齢化が進行する日本にとって継続的な雇用機会の側面も持っているのだ。

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自衛隊機は国産でなければならないのか

今日の産経新聞の報道によると、次期主力戦闘機(FX)の導入の遅れを受け、防衛省がF2戦闘機を20機程度追加調達したいという。F4戦闘機の退役が間近にもかかわらず、FX候補であるF35の生産開始が平成28年以降となる見込みのため「繋ぎ」としてF2で補完したいようだ。産経の記事は、F2の生産が途絶えれば戦闘機の生産・技術基盤が失われるとの防衛産業の懸念もくむ措置でもあると指摘する。

いったい戦闘機の生産基盤を守らなければならない理由は何であろうか。
F35はアメリカ以外に十カ国が開発費を出資している共同開発機である。そして参加国の分もあわせて数千機ほど量産される予定だ。他方日本のFXの導入規模は数十機でしかない。そのためだけに生産に関わる人員や設備を用意するのは、割高な機体の単価となって跳ね返ってくるであろう。
戦闘機の生産技術を継承し続けても、今後もアメリカと日本の戦闘機の購入量は何十倍もの格差があり、日本の相対的な高コストは今後も不変のはずだ。そしてさらに重要な点はアメリカ軍の方が実戦に晒される機会が多いため何にも替えがたい情報が得られる。延々と続く兵器開発は、アメリカが他国よりずっと有利なのだ。

日本はアメリカと同盟関係にあるのだから、必要で安く良い物なら同盟国から輸入すればよい。兵器の納期が遅れるなら、軍事力そのものでその間支援してくれるのも同盟国に期待していいだろう。

日本の兵器産業は、同盟国から購入できないものまたは輸入しても安くならない物を開発・生産することに専念すべきだ。

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