国債で既存企業保護は時代に逆らう

バブル崩壊後、政府は累計約500兆円に上る国債を発行してきた。景気を下支えするためにである。
三橋貴明氏は日経ビジネスオンライン(8/17)でバブル崩壊後政府が負債、支出を拡大しなかった場合、日本のGDPは毎年10兆円を越えるペースで減少していった可能性が高く、我々の所得が毎年激減していったはずと主張している。

国債発行で民間の投資減少の補填をして経済危機を凌ぐという考えは三橋貴明氏に限らずたくさんの支持者がいるだろう。そして公共事業を請け負ったりした関係者は救われたり儲けたりしたに違いない。

しかしバブル崩壊後、需要の減った事業を救わずに給料激減や企業の再編そして労働力の移動・解雇を断行していれば、国民の生活は急激に苦しくなっただろうけれど既存企業が時代とともに変質したり新しい産業が芽生えたりしたのではないだろうか。国債を発行しての政治家主導(支持母体への利益誘導)の投資は今までの商売を延命させた代わりに、未来の革新的な企業の芽をいくらか摘んでしまったと思う。

例えば銀行業界。バブル崩壊後国が超低金利政策によって保護してきた業界だ。保護のおかげで相変わらず大きな業界のままだが、カネの貸し出し先は少ないまま預金は大部分国債購入に向けられているようだ。
国による保護と引き換えに、事業の縮小を強いていればもっと資源が有効な事業に向かったのではないだろうか。国民は近くにたくさんあった銀行の支店が、遠くて不便なところに少しあるだけの存在となることを受け入べきだったと思う。

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国債で既存企業保護は時代に逆らう への4件のフィードバック

  1. タロキチ のコメント:

    (しかしバブル崩壊後、需要の減った事業を救わずに給料激減や企業の再編そして労働力の移動・解雇を断行していれば、国民の生活は急激に苦しくなっただろうけれど既存企業が時代とともに変質したり新しい産業が芽生えたりしたのではないだろうか。国債を発行しての政治家主導(支持母体への利益誘導)の投資は今までの商売を延命させた代わりに、未来の革新的な企業の芽をいくらか摘んでしまったと思う。)

    私はあなたと完全に逆の意見です。
    政府が国債を発行して民間に仕事を発注する際には入札が行われますのでそこに競争原理が入ります
    ですので別にぬるま湯ってことはないと思いますよ(一部でお饅頭(笑)を受けるようなのもあると思いますが)
    未来の革新的な企業はむしろ好景気時に発生しています。
    なぜなら革新的な技術の発明にはかなりリスクをとって資金を回す必要がありますが、不景気時にはそのリスクは取れません
    企業は目先の利益の確定に動くからです。(SONYがQLIO等ロボット開発を打ち切ったり自動車メーカーのレース撤退等が具体例でしょうか)ですから企業が長期的な投資に後ろ向きにならないように政府が落ち込んでしまった景気を一定のレベル
    で下支えするのは正しいと思うのです。
    佐藤さんの意見の中核的な価値観は各経済主体の規律を正すべきだということだと思いますが私もそれは正しいと思います。ですが、現実に企業や家計がさらされる急すぎる変化に政府がスタビライザーとして干渉するのは条件によっては効果的でもあると思います。

    P.S.
    たまたまブログを見つけて色々なトピックに書き込んでみました。
    自分とは考え方がかなり違う意見が多くてむしろ面白いです。
    またちょくちょく遊びに来ます!!
    よろしくお願いします!!

  2. 佐藤健 のコメント:

    >タロキチ様

    私の拙文にたくさん目を通して頂いた上、長文のコメントまで残してくださり誠に有難うございます。

    さて私は政府や政治家主導による企業の発展の助長というものは、あまり成功しないと思っています。無数の企業家が思うがままに様々なチャレンジをし、その中のほんの一握りの商売が「結果的に」生き残って新しい社会を主導していくと考えています。
    危機に陥った会社の幹部は責任を取り、衰退産業は容赦なく消滅すべきと思っています。そのせいで、苦境になる世帯には現金給付(そしてそうでない世帯には同額の減税)で救うのが、一部の産業への助成や公共事業より公平だと思います。

    またタロキチさんのご訪問と忌憚のない意見をお待ちしています。
    有難うございました。

  3. タロキチ のコメント:

    >佐藤健 様

    私は政治主導(政府支出)による企業の発展は十分ありえるものと考えており、いくつかの例も実際にあります。
    50年前日本では国が支援して自動車産業を起こそうと政府が計画しました。
    そのとき政府内にも自動車なんかいらんという声もありましたが今トヨタ自動車は世界一の自動車会社になっています。
    またアメリカではIT産業の元は国防省や大学の研究機関(つまり政府支出)から始まり技術研究に使った金は
    今の金で1.3兆円だけです、これが後にアメリカのGDPを1.5倍にしたのにかかった金額です。
    また、もし今回の金融危機に陥ったアメリカのAIG ファニーメイ フレディマック モルガンスタンレー ゴールドマンサックス
    等すべてつぶしていたら世界経済と金融システムは一切機能しなくなってた可能性もあります。
    また、現金給付だと所得移転なのでそれが使われなければGDPは減ってしまいます。(増税でファイナンスする場合)

  4. 佐藤健 のコメント:

    >タロキチ様

    ご返答有難うございます。
    私も政治主導で企業の発展もあり得るとは思います。
    しかし実際の政治による歳出は、何より与党の票田となる業界が潤うよう偏って分配されがちです。

    確かに金融システムは守らねばなりません。
    ただし金融機関がリスクの高い投資をしても税金で損失を補填してもらえるとなると、今後も金融業界が税金頼みでハイリターンを狙うでしょう。
    ですから守らなければならない部分については、高いリスクを負うことが出来ないような規制が必要です。
    一般的に言って証券会社(投資銀行)は潰れても銀行ほど混乱しないのではないですか。

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