メドベージェフ・ロシア大統領の北方領土訪問に打つ手なし

1日にメドベージェフ大統領が国後島を訪問した。ロシアの国家元首が北方領土に入るのは初めてということで騒ぎになっている。仙谷官房長官は「遺憾」と述べ、前原外相は駐ロシア大使を一時帰国させるという。

何かにつけてロシアの過去の侵略について非難し、ロシア人をはじめとしてた世界の人々に対し日本の言い分を知らしめることは、ひょっとしたらロシアの世論に何らかの影響を与えるかもしれない。

しかしロシア国民の世論が一気に北方領土の返還に傾くものだろうか。あるいは北方領土で生まれ育った世代のロシア人島民は同意するのか。貧しいとはいえ、1万6千人余りのロシア人が根を下ろして生活を営んでいる。
幸か不幸か、もうソ連時代ほど国家の指導者の強い影響力で物事を決めてしまう国ではない。権力者だけと話をつけて国境の線引きを変更してもらう訳にはいかないのだ。

所詮世界は勝手な暴力が支配している。また戦争が起きても世界の国々が侵略されている国の方を軍事力で救済してくれる訳でもない。
日本からすれば第二次大戦降伏直前にソ連が一方的な侵略を行ったということになるが、ロシアから見れば時代を遡って樺太・千島交換条約で話し合いで取り決めたロシアの樺太領有を日露戦争時日本に奪われたという言い分もあろう。過去にロシアも戦争で領土の割譲を余儀なくされたのだ。
第二次世界大戦でヨーロッパ大陸の諸国も国境が戦争によって変化したが、その後もいくつかの国家の分裂や統合こそ起きたものの国境が戦前に戻るということはない。

もう日本は戦争で揉め事の片を付けるという気はさらさらないし、ロシアに勝る軍事力も保有していない。
いくら日本が北方領土に拘っても結局ロシアの国情次第ではないだろうか。ロシアの勢力が極端に衰退し、北方領土の支配する力も無くなるまで四島返還の機会はやって来ないだろう。それを待つ以外に日本が一体どんな有利な交渉材料を用意できるというのだろうか。

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