東日本大震災の中で最も尾を引いている福島第一原子力発電所の放射能汚染事故の為、原子力エネルギーの利用に対する逆風が吹いている。日本国内のみならず世界の世論までも「反原発」に向かわせた。
では原子力発電による電力の確保をやめて、化石燃料から作る電力に頼る社会に戻す方が良いのか。
■世界は石油資源獲得のために戦争までしてきた
かつて列強は主要な石油の産地を支配した。石油が植民地支配の目的の全てではないにしても、世界は植民地の資源を巡って戦争をしてきたのである。
そして欧米から独立後なおも中東諸国の争いは石油問題と決して無縁で無いだろう。
また現在日本の尖閣諸島の支配に異議を唱える中国も、その周囲の海底で化石資源が埋蔵されていると言われるようになったゆえそのような行動に出るようになったに違いない。
仮に火力発電所が重大な事故を起こしても、当事者のみの犠牲で済むかもしれない。しかしその化石燃料確保の経緯まで考慮に入れれば、世界はたくさんの犠牲を払ってきたと言える。
今まで以上に世界が石油・天然ガス資源へ深く依存すれば、それを巡る争いも深刻度を増すはずだ。
■世界の大部分を占める途上国の今後の発展に石油が必要
石油は発電の使用に留まらず、船舶や自動車そして飛行機の燃料として用いられる使い勝手の良いエネルギーだ。また石油はエネルギーとして消費されるだけでなく、石油化学の発展とともにあらゆる分野に利用される素材と化している。
これから世界の大部分を占める後進国が先進国並みの豊かな生活を求めて石油や天然ガスを多量に消費するようになる。それを止める事は出来ないし、彼らに化石燃料の代替として原子力の利用を進めるのは甘いのは勿論だ。
結局先進国が原子力でエネルギーを賄い、後進国が使い勝手の良い化石資源を使うのが争いや事故の危険性を低下させて最も犠牲を少なくする住み分けになるのではないだろうか。