7日、東日本大震災復興構想会議の五百旗頭真議長が被災地を視察した。訪れた大船渡市、陸前高田市から被災地域の国有化や補償を求める意見が出され、買い上げなどの実施の必要性を認めたという。
国有化によって土地・家屋に対する権利を取り上げたほうが、被災地の再編が容易だろう。
しかし利用価値を著しく損ねた不動産を、震災前の価値で買い取るのは「やりすぎ」だ。
■満潮で浸水する土地に買い取り価値は無い
個人の手に余る土地は、結局国や地方地自体が管理する事になる。ただ被災地の希望は利用できなくなった土地(即ち買い手の付かない金銭的価値無い土地)を、また別の場所で震災以前と同様の価値の土地が購入できる値段を付けて国に引き取ってもらいたいということだろう。それは端的に言って「甘い」のではないか。
被災地域が当てにする国のお金は一部は現在の納税者が負担し、不足分は国債を発行して調達するであろうから将来の納税者が負担する。現在将来問わず納税者の中には毎年の所得はあっても、土地・家屋の資産まで築けない人が少なからず存在する。資産の無い人まで、他人の資産の補償に付き合わされる筋合いは無い。
また国に求められているのは現状維持ではなく、あくまでも最低限の生活の保障である。資産の維持まで手を広げたら格差の固定をするようなものだ。
なお個人のローンに対する棒引きも要望としてあるようだが、もしそれが必要最低限とは言えない大きさの住宅に対する借金なら、借金した人の責任を問うべきである。
■元々人口減少傾向の町を以前の形に戻すのはムダ
今回の被災地域のほとんどは、既に人口の減少が始まって久しい。そのような地域の土地を整備したところで、他の地域から人や企業が集まってくることが期待できるかは大いに疑問である。
そして国が浸水地域を埋め立てて以前の標高を回復しても、地震や津波には脆弱だろう。そんな所での暮らしを積極的に誘致するわけにも行くまい。
住民自らが費用を負担するなら、どう計画しようが勝手である。しかし再利用の当てのない土地をダシに国から援助を引き出すのは感心出来ない。