電気料金値上げ 三つの利点

東京電力福島第一原子力発電所放射能汚染事故の賠償の原資として、電気料金を値上げすることが取り沙汰されている。
まずは東電の経営陣や株主、事故直前までに発生した東電への債権の保有者そして国の責任の徹底が第一ではある。しかしそれでも東電の責任と認定された賠償額に対し用意可能な金額が不足するなら(その可能性は大いにありそうだ)東京電力管内の電気料金値上げによって被害者を救済するのも仕方無いのではないか。

そもそも保有資産を全て処分したら、後は電気料金収入から賠償金を捻出する他ない。しかし原発を失ったためリストラ等でお金を確保するどころか、代替の火力発電の燃料費が今後毎年数千億円余計にのしかかってくる。少なくとも一時的な電気料金値上げをしなければ、保有資産以上の賠償は期待できない。

なお日本は現状でさえ電気料金が諸外国より高いのに、さらに上がると生産活動が一層困難になるという見方もあるが、それは賠償金の財源に各種税率を上げることでも結局経済活動の足かせになる。賠償金総額は当然不変だ。今回の事故とあまり関係ない暮らしをしてきた人からも薄く広く賠償金の財源を集めるより、出来れば東京電力のほか電力をたくさん消費している受益者に求めるのが補償の筋であろう。
そして被害者救済の他に電力料金値上げすることで発生する利点を三つ上げてみる。

■ついに家庭を巻き込んだ強制的なCO2削減が本格化する
ここ数年「エコ」と言う言葉の普及に代表されるように、地球環境(地球温暖化)に対する関心が高まってきた。しかしその建前のキレイ事とは裏腹に日本全体の二酸化炭素排出量は90年比で増加したままだ。

日本国内の発電には石炭が少なからず使用されており、CO2排出の抑制には節電が有効である。(はっきりした痛みを感じるほど)大幅な電気料金値上げが実現したなら節電の動機が国民生活の間で生まれるに違いない。いや、生み出さなければならない。もう「エコポイント」などと称した制度で、やたら大きな液晶テレビが売れるなんてことも無くなるだろう。

原発増設が極めて難しくなってしまった今、原子力利用によるCO2削減は期待できない。それどころかこの度の事故で貴重な4基の原発を失ったのだから、今まで以上に電力使用を抑制しなければならない。

日本は京都議定書でCO2排出削減の義務を負うことを約束した。90年比6%削減という目標を達成しなければ、ペナルティーを払うことになっている。その額は何千億円になるか何兆円になるか計り知れないが、お金を外国に払うくらいなら少しでも原発事故の被害者への補償に回したいと願わざる得ない。

■事故の責任のない東北地方が相対的に有利になる
東京電力管内の電気料金が上がれば、それ以外の地域は相対的に電気が安いので経済活動の場所として有利になる。また東京電力管内の需要者へ東北地方の発電業者が電気を売却できるような制度であれば商取引と言う正当な理由で東北地方にお金が回る。
商用電源周波数を全国で統一出来れば、西日本も東電管内へ売電する道が見えてくるだろう。

間違っても東電の責任を、事故と無関係な会社に分担させてはならない。まだ惨事を起こしていない地方の事業者から不当に富を吸い上げることになるし、「大地震なら無責任」という悪しき前例を認めることになってしまう。

また東京から経済活動や富が地方に分散するのは、遅かれ早かれ首都圏を襲う大地震の被害を減らす最も根本的な対策にもなる。

■電力市場への新規参入者が期待できる
もちろん電力市場の新規参入を今まで以上に活発にするには電気料金値上げだけでなく、様々な法改正が必要になろう。

それはともかくとして電気が高く売れ、しかも東京電力が資本の払拭や事故の後処理、あるいは国有化で弱っていれば新規参入が成り立ち易い条件といえる。
いずれ賠償が終わり発電市場が競争状態になれば、現在の独占状態よりも効率の良い市場になるのではないか。

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