21日与謝野馨経済財政相が年金支給開始年齢の引き上げについて発言した。
「人生90年を前提に定年延長を考えなければならない。年金の支給年齢の見直しもあり得る」
年金財政が逼迫しているからと言っても、高齢者には求人が少ないので年金受給が遅れては困るに決まっている。またそのツケを定年延長として企業に払わせるのも非常に迷惑な話だ。
■高齢に伴い活躍できない事情が増えるばかり
高齢者と言えば、第一に本人の健康問題が上げられる。本人や配偶者そして親、誰もが歳を重ねて体は弱っていく一方だ。自分の健康や家族の世話をするため、職務に以前ほど専念しにくくなる場合がある。
また今まで積み上げてきた豊富な経験のせいで、新しい時代の流れを素直に受け入れられないということもあろう。
長きに渡って働く間、たくさんの人に世話になりいろいろな義理を感じるようになる。すると斬新な試みをするにも周りに気を遣ってしまい、なりふり構わず貫き通すということに抵抗感を覚えるかもしれない。
■いつまでも辞めないなら企業も困る
そんな高齢者を年金財政の困窮のため企業に押し付けられては堪らない。結果従業員の解雇規制を強めれば強めるほど、雇用期間の定めの無い契約(いわゆる終身雇用)を結ぶことを企業は躊躇するようになる。勿論、高齢者の雇用の負担で他の企業に敗北してしまったら元も子もない。
定年退職とは、能力を問わず一律に職場を去ってもらう制度である。この杓子定規な退職制度はある意味労働者の面子を潰さずに、会社の高齢化を抑制するという良い面がある。
そんな利点も、定年そのものを引き上げてしまったら有り難味が薄れてしまう。
結局増税で年金財政を立て直し、60歳過ぎたら年金を支給できるような制度を守るしかないのではないだろうか。