病院船導入というムダ使い

産経新聞の報道によると、政府が病院船導入の検討をしているらしい。きっと東日本大震災のような災害での使用を想定しているのだろう。もちろん災害時には医療サービスの移動が必要が求められるのは分かる。

しかし平時を基準に考えれば、わざわざ病院を「航海」仕様にして保有するのは余計な費用が掛かるに違いない。また被災地が広域に分散した場合、不公平感を持たれないよう運用するのも難しそうだ。

■そもそも病院船は戦争遂行の為に外国で使用するもの
病院船とは、戦争の際に戦場の近くで負傷者の本格的な治療が期待できない場合に必要とされるもの。大抵は自国の主権がもともと及ばない土地つまり外国こそが活躍の場である。

日本は専守防衛が建前なのだから、病院船をそのような目的に使用することは無い。また災害救助をするなら医療の拠点は現場近くの陸上に展開すれば良い。もちろん外国に対する救助でも同じことである。

■拠点・設備・資材を各地で用意、人を移動すればいい
当たり前のことだが折角病院船を用意しても、被災地が内陸部だったり隣接する港が使用不可能ならそれほど有難くない。船の機能を持つ「移動病院」よりも各地域に強固な避難の拠点を確保すべきではないだろうか。

必要なのは人材や物資を受け入れたり、逆に手に負えない患者を速やかに他の地域に送ることが出来る拠点と輸送手段である。災害に強く被害に応じて拡張性のある拠点、そして人・物資の迅速な輸送手段としての航空機、自動車そして船舶を利用できるよう準備しなければならないだろう。

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病院船導入というムダ使い への14件のフィードバック

  1. 病院船 のコメント:

    ブログ名 『国際貢献船 仮称信濃』
    2011年3月30日
    「病院船の必要」
    http://blog.canpan.info/ngosinano/category_4/
    病院船を攻撃してはいけませんww

  2. 病院船 のコメント:

    移動式防災拠点としての病院船

    病院船を勘違いしている総ての人へ[2011年08月20日(土)]
    http://blog.canpan.info/ngosinano/

  3. oldpar のコメント:

    海上自衛隊の保有する補給艦は医療設備をもちへリポートを備えており。こういう緊急時の救援活動に使える艦艇です。中東ではアメリカの揚陸強襲艦「ワスプ」が補給等で留守の時、病院船として活躍した「とわだ」も補給戦です。
    現在のましゅう型をさらに大型化して専用ヘリを搭載すればまさに打って付けではないでしょうか?イメージとしてはアメリカの保有する揚陸強襲艦の小型版というところでしょうか?実際、今回の大震災ではアメリカの「ともだち作戦」の主力として活躍した「エセックス」も揚陸強襲艦です。

  4. 佐藤健 のコメント:

    >oldpar様

    既に自衛隊が専守防衛という前提で保有している艦艇を利用するのはいいと思います。またヘリコプターを含めた航空機を増強してたくさんの怪我人の発生を日本全国に分散して対処するのも必要です。もちろん受け入れ先となる医療機関の一層の整備も。

    しかし(何百床もある?)移動病院の建造は納得できません。普段その巨大船舶をどう有効利用するのでしょうか。日常的にベッドを埋めたら緊急時使えないし、遊ばせておくのは陸上の同規模の施設より維持費が余計に掛かるでしょう。

  5. 我が国には病院船が必要だと思っています のコメント:

    わたしは被災地出身の医師ですが、以前から病院船の必要性を国会議員等に働きかけて来た立場です。今回ほどくやしかった経験はありません。備える前に過去最大級の大津波が来てしまいました。
    「遊ばせておくのは維持費がかかる」との仰せですが、空床だけを見ればそうとも言えなくも無いですが、今の陸上の病院群は空床が無くて、いざという時にたらい回しになっている現実があるわけです。木村健氏の「アメリカで医者をやるのにはワケがある」という本の中で
    「アイオワ大学病院では、あえてICU(確か100だか200床)を空床のままにしてある。いざという時のためにあえてそうしている。ムダだという向きもあろうが、そうしているからこそ誰に対しても備えがあると言えるのであって、やめる事は納税者たるアイオワ州民がこれを許さないであろう」と書いています。要は政治家や医療従事者や国民の想像力があれば必要性を理解出来るのではないでしょうか。人口や経済規模、ケチっている医療費から言って、日本が病院船を維持できていない事の方がおかしいとすら思っています。

  6. 我が国には病院船が必要だと思っています 以前から僻地・沿岸部の医療関係者で言われていた経緯を紹介します のコメント:

    (健康科学大学学長・元日本老年医学会理事長 折茂肇「わが国に病院船を」)
      “日本医事新報 No.4353 2007.9.29”より打ち込みました 

    いまだ我々の記憶に生々しく残っている阪神・淡路大震災の際には、世界各国から様々な援助の手が差し伸べられたが、政府の対応には数々の反省すべき教訓が残された。一例として、米国からの「3000人収容が可能な空母を病院船として使用されたい」との申し出を断った事がある。
    担当の将官達は日本の無理解を嘆いていたとの事である。
    海に囲まれ、地震や火山の噴火などの災害に定期的に見舞われているわが国が、災害時に役立つ病院船を一隻も持っていないのは不思議な事である。
    わが国では海岸線から13km以内に総人口の約50%が住んでいる。
    大地震発生時には陸上の交通網、通信連絡網、医療施設などの破壊が予想され、その際最も頼りになるのが病院船ではなかろうか。
    病院船には食料を貯蔵し、救助部隊が高速艇や消防艇で河川を遡上し、沿岸での消火活動、被災者の救助、収容、治療にあたる。船内には情報センターやプレスセンターを設置し、甲板には移送用ヘリコプターの基地を造り、緊急時には医療スタッフや患者、被災者、各種の資材などをヘリで移送させる。
    平時には定期的に過疎地域や島嶼に回航し、住民の検診や治療を行う。地域医療が崩壊しつつあるわが国の医療危機を救う一助となる可能性もある。
    また、海外難民の一時収容、海外災害地域へ派遣し、国際平和に貢献するための活動も行う。イージス艦派遣よりもはるかに「顔の見える」国際貢献、平和貢献活動として世界からも認められると思う。
    このような機能を持った船は、わが国には海上自衛隊にもあるが、不十分であり、災害時における固有の病院船の建造が必要であろう。
    海外の状況を鑑みるに、米国は収容施設とヘリコプター運用能力を兼ね備え、更には手術室を備えた「浮かぶ病院」ともいえる大型空母を多数持っている。
    代表的なマーシークラス病院船は1000ベッドを持ち、湾岸戦争でも活躍している。専用病院船はロシア、中国にもあり、多くの国では各種艦艇に病院機能を持たせた準病院船を用いた災害救助体制を整備している。
    医療費抑制策が続くわが国において、政府がこのような提案を受け入れる可能性は少ないであろう。しかし、NGOが民間の客船や大型フェリーを改造して病院船として利用する事も可能である。
    要は、厚労省、防衛省、総務省などの行政間の壁を取り払い、柔軟で効率の良い運用体制を整える事が出来るか否かにかかっていると思う。
    日本学術会議の勧告にもあるように、このような病院船の必要性は過去にも多くの識者により提唱されてきたが、真夏の夢に終わらせたくないものである。(終)

  7. 我が国には病院船が必要だと思っています ICUに関してはその一部だったかも・・・ のコメント:

    以下の中に、ICUが200床との記述はあるのですが、空床比率は曖昧です、本で確認致します

    救急のコスト
    http://kenkimura.weblogs.jp/blog/files/19950201.pdf

  8. 佐藤健 のコメント:

    >我が国には病院船が必要だと思っています 様

    はじめまして、コメント有難うございます。実際に空床が無い問題を目の当たりにしている医師の方ですね、恐縮です。

    空床の件は陸上の病院を強化するのことにし、被災地から航空機で患者を送った方が良いのではないでしょうか。病院を船にするのは維持費の掛かることの外、急患を救うのには向かう速度が遅すぎるという欠点があるように思います。

    なお、国民の医療費に対するケチさ加減には困ったものですね。医療に限らず人手をかけたサービスを受けたなら相応の対価を払うべきです。また健康や命に最大の価値を置くなら、もっとお金を費やすことも含めて様々な努力や節制をするべきだと思うのですが。

  9. oldpar のコメント:

    >我が国には病院船が必要だと思っています 様

    あなたが仰っているのは空母ではなく強襲揚陸艦です。日本のマスコミも政治家も官僚も軍艦の区別をつけれる人はまれです。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%B9%E3%83%97%E7%B4%9A%E5%BC%B7%E8%A5%B2%E6%8F%9A%E9%99%B8%E8%89%A6

    海上自衛隊は阪神淡路大震災のときは、大規模災害に対する出動経験がなく、とりあえず神戸沖に艦船を集めるという考えなしな行動をとって批判をあびました。当時陸路が大渋滞で陸自が神戸入りできなかったので、陸自部隊を輸送すればよかったのにという的を得た批判です。海自と陸自が協力していれば、陸自の展開が1日以上早くなったと思われます。

    多分病院船構想に関しても、現有の護衛艦を災害時にどのように利用するかというノウハウの問題のように思われます。災害が起こったときに外科や整形外科の医者に非常呼集をかけて可能な限り速く乗船させ被災地に向かう。ということを組織的に行える唯一の組織が自衛隊です。自衛隊にはそういう研究をして欲しいと思います。また学校などのヘリが離発着できる場所はそういう緊急時に利用可能にするような法律の整備等も必要でしょう。
    不足であるならワスプのような船を保有するのもよいと思いますが、外見的にも機能的にも空母の機能があるので、中国や韓国の批判を覚悟でないと保有は難しいでしょう。今の政治家たちに覚悟があるとは思えません。

  10. 佐藤健 のコメント:

    >oldpar様

    こんばんは、ご指摘有難うございます。

    oldparさんに伺いたいことがあるのですが、ワスプ級の強襲揚陸艦は日本の「専守防衛」という原則に適している船舶なのでしょうか。PKO等の海外派遣は想定しない場合です。

    外国の反応は無視するとしても、維持するには資金のほか人材や場所など限られた資源を使いますから過剰装備になると勿体無いです。ワスプほどの大きな船はアメリカでさえ数隻しか保有せず、数年おきにしか発注していません。最新の電子装備及び量産効果によるコスト逓減の両立は見込めないような気がするのですが。

    もしワスプの設計の流用をしてもコスト低減の効果が少ないなら、日本の最適な艦船を新規に設計・配備すべきだと思います。その上で自然災害への対策としての利用といった順番で。

    よろしければご教示お願いします。

    自衛隊による災害派遣の研究には勿論賛成です。民間の運輸業者との提携も加えた効率のよい投資が求められると思います。

  11. oldpar のコメント:

    強襲揚陸艦はその名の通り敵前に海兵隊を上陸させるための船です。専守防衛の観点からは難しいのではないでしょうか?ただ、海上自衛隊は輸送艦と言って、限りなく近い船ももっています。
    補給艦、輸送艦ともにICUを含めたすぐれた医療設備をもっておりペルシャ湾掃海艇派遣やインド洋の対テロ派遣では他国の艦船や部隊の急病人などを受け入れておりました。

    わたしの考えですが、災害時に緊急の手術や透析などの救命医療とその後の回復医療とは分けて考えるべきでしょう。ICUなどは既存の船で充実させる方法を考えるべきだろうと思います。
    確かに現在の1艦2床は大規模災害を考えると少ないような気がします。今後この種の艦艇を作るときには研究すべき課題でしょう。

    ちなみに「ましゅう型」補給艦は「こんごう型」イージス艦より大きいです。満載排水量で25、000tもあります。「こんごう」の2倍半です。

  12. 佐藤健 のコメント:

    >oldpar様

    こんばんは、丁寧なご教示有難うございました。

    自衛他は輸送艦といって強襲揚陸艦に限りなく近い船をもっているなら、「専守防衛」などという思想で、揚陸と輸送を分類するのは詰まらないことみたいな気がしてきました。

    自衛隊の艦船の多くが排水量数千トンの巨体にもかかわらず「2床」のままなら、救命医療として余りにも効率が悪いです。もちろん救援に来ないよりマシですが。

    今後自衛隊の艦船を災害時の医療サービスの提供に目一杯活用したいなら、追加的な準備が必須のようですね。

  13. oldpar のコメント:

    誤解を与えたようで申し訳ないですが、1艦2床というのはICUのことです。輸送艦などは完全武装の兵士300人と90式戦車10輌を乗せれるのですから、病院のベッド数なら100程度は余裕でしょう。「ワスプ」が3000床のベッドを用意できるのと同じです。

    輸送艦は大きな飛行甲板とウェルドック(舟艇用の船内ドック)を備えており、専用のホバー艇を搭載しています。港湾設備のない所にも車輌や人員を下ろすことが出来ます。

    誤解といえばもうひとつ、輸送艦と強襲揚陸艦の関係もあります。限りなく近いのは外見です。無教養などこかの新聞が海自に空母があるとスッパヌキのつもりで記事にして失笑をあびました。
    さらに本来の目的も「揚陸」です。実は海自の輸送艦は国際的には「揚陸艦」と呼ばれる軍艦です。多分、「軍隊を自衛隊と呼ぶ」のと同じ理由で本来の名前では呼ばれませんでした。言葉遊びの不毛さがにじみ出ています。
    では何が違うかというと、ヘリをはじめ航空機を搭載しておりません。搭載量も数千tとはるかに少ないです。「ワスプ」は海兵隊2000人と約20機の航空機、約100台の車輌を積んでいます。小さな戦争を起こせるレベルです。
    日本の輸送艦は離島防衛のために陸自主力を展開するのが目的ですから、これくらいの規模でよいのでしょう。もともと竹島の苦い経験から揚陸艦の必要性が唱えられたという経緯があります。

    そのほか、海自にはヘリ空母と呼んで構わない「ひゅうが」という空母そっくりの艦艇が存在します。「ひゅうが」は正面からヘリ空母を予算請求して失敗した海自がヘリ搭載護衛艦として、限りなくヘリ空母に近い護衛艦を建造したものです。
    排水量のわりには性能が控えめなのは、いざとなったら改装してVSTOLを搭載するためではないかと憶測を呼んでいます。中国が空母を運用しはじめたことからVSTOL搭載が現実味を帯びてきました。

  14. 佐藤健 のコメント:

    >oldpar様

    こんばんは、度重なるご教示有難うございます。

    はい、誤解と言うか海上自衛隊の護衛艦一般が「1艦2床」と思い込んでしまいました。ひゅうが型を除いて護衛艦は陸上で発生した急患の救命に殆ど役に立ちそうにありませんね。

    「揚陸」と「輸送」とは分類ではなく、言い換えているだけということでしょうか。(それにそもそも軍事組織とは「強襲」なものですし。)

    さて私は自衛隊の装備は軍事目的に洗練すべきと考えています(災害派遣は、その上での二次的活用)。自衛隊と言えども所詮「お役所」です。余り多くを要求すると、高く付くと思うのですが。

    ところが国民の多くは自衛隊の災害派遣に強い期待を持っているようですし、自衛隊員もそれに応えようとして頑張ります。それが悪いとは言い切れませんが、釈然としません。

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