参院選の選挙公約に、政府・日銀でデフレ対策に取り組むことをあげている党が複数あるが、そもそも物価の下落を国主導で防ぐことが出来るかは疑わしい。
物価下落の原因としては、新興国の工業が発展し従来日本で生産してきた商品がより安い価格で輸入出来るようになったことが何より大きい。それは新興国と同様の商品しか生産できない労働者の失業につながる。日本国内の労働者が余るようになれば、新興国の産業と直接競合しない業界も値下げ競争が起こるようになる。
新興国の圧倒的に強い点は、先進国の数分の一という格安賃金だ。たとえ日銀が金利を0%にしたところで、価格の差を埋め合わせることは出来まい。そして消費者という立場では、同じ品質のものならなるだけ安いものを求めるに決まっている。だから日銀がお金をタダで貸そうが配ろうが、結局国籍問わず安く売る産業が支持させる。
世界の経済動向の趨勢に日本が無縁ではいられない。日本国内の産業が世界の中で埋没すれば、その生み出す製品・サービスの価格そして賃金は必ず下がる。所詮中央銀行の金利の上げ下げだけで、その国の産業や労働者の給料の価値を守ることなど不可能なのだ。日銀に景気の浮揚は期待すべきでない。
政府・日銀にデフレを解消する方法がひとつある。それはお札をどんどん印刷して国債の償還なり、政府の新たな歳出なりに当てることだ。政府や一部の固定金利の債務者にとっては、一旦借金が棒引きになったり負担が軽くなることを意味する。一時的に彼らは大喜びだ。しかし増刷された通貨が多すぎれば、物価上昇は必要な輸入品の高騰にまで及ぶ。円で貯蓄を持っている多くの国民の財産は必ず目減りするはずだ。