自民党の二重ローン救済策

産経新聞によると、自民党は東日本大震災で二重ローンに陥る可能性のある被災者への救済策をまとめたという。漁船、工場そして商店などの債務を公的機関が買い取るのがその内容らしい。有り体に言えば、税金で過去のローンを肩代わりすると言うことだ。業界という視点で税金をバラ撒くのは如何にも自民党的である。

■自民党の不公平な業界偏重バラマキ
自民党案は業界の借金を棒引きにする一方で、個人住宅の二重ローンの救済は低利融資をするに留まるようだ。借金が過大な負担かどうかは、債務者の稼ぐ能力や未だ手元のある資産の量に関わっている。決して自営業かそうでないかが重要ではないはずだ。

借金が返せそうにないなら、個々のケースに応じた法的な整理で借金の棒引きをすればよい。その方法による借金の棒引きが誰にとっても(被災地以外の借金に追い詰められた人にとっても)公平である。最近は弁護士の余剰感があるようだから、被災者と彼らを斡旋したらよいのではないか。

■借金を棒引きにしてまで「衰退状態」に復元するのは税金の無駄遣い
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域は、全て以前から人口減少が続き衰退しつつあった。今回の被災で一度に地域の数%にあたる人口を失い、商圏としては更に小規模になった。人口が減ったのだから商店を以前の状態に戻しても以前の売り上げは見込めない。

また漁業についても日本全体としては無傷だった全国の漁業者の漁獲能力が需要を満たすなり、あるいは魚介類を輸入して解決しても良い。税金を投じてまで漁船を増やしても需要が増加しなければ全国的には一人当たりの漁業者の利益が減少するだけである。また漁業資源の乱獲に繋がる可能性も高まる。どちらも有害無益である。

また今回の被災地は津波に脆弱ということ以外にも人口減少が進む経済的問題を抱えていた訳だから、復元してもそれは「衰退しつつある状態に復元する」だけだ。

自民党案の救済策は不公平であり、また日本経済全体のバランスや長期的な人口減少という傾向に対する視点が欠けている。自民党案では投資は無駄になり、国債の累積残高が増加するだけであろう。

カテゴリー: 東日本大震災 タグ: , , パーマリンク

自民党の二重ローン救済策 への2件のフィードバック

  1. 通りすがり のコメント:

    ご年齢は存じませんが、「これからの時代」 の方とは違う感じをうけました。

  2. 佐藤健 のコメント:

    >通りすがり様

    はじめまして、コメントをありがとうございます。
    さて、通りすがりさんの言う「これからの時代」は衰退地域を襲った自然災害に起因する被害(借金)をどうすべきとお考えでしょうか。第一次産業への投資が有望ですか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です