温暖化ガス国内排出量取引制度の問題点

■日本国内の個々の企業に排出枠を義務付けることは成長する事業を阻害する

12月28日政府は地球温暖化対策の主要3施策に関する基本方針を決めた。3施策とは環境税、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度そして国内排出量取引制度であるが、そのうち排出量取引については先送りという判断になった。

排出量取引はその前提となる企業の排出枠をどのような基準で決めるのが最適なのか未だ明確でない。温暖化ガスの抑制には排出量取引制度を設計し実施するより、石油石炭など化石資源にかける環境税をさらに重い課税とすべきではないだろうか。その方が単純明快な制度で済みそうだ。

排出量取引は予め企業に温暖化ガスの排出枠を決めて、枠を超えた分は他の企業から余った分を購入するという仕組みだ。賛成する立場からの意見としては排出量取引制度は排出枠を設定した時点で将来の温暖化ガスの削減量がより確実に見込めるようなる、そして温暖化ガスの削減が容易な企業をさらに後押しするので社会全体の削減コストは少ないというメリットを上げる。

しかし実際には制度の前提である排出枠を公平に決定するのが不可能と言っていいのではないか。
社会には無数の種類の商売が存在するが、その種類別に排出枠を検討し社会的合意を得る(政府が義務付ける)のは難しい。
同業だとしても大企業もあれば、中小企業もある。たくさんの小さい企業が排出枠を割り当てた上、制度を守っているか監視するのは手間が掛かるだろう。結局零細企業(そして家計)は排出量取引に参加させることが出来そうに無い。

そして個々の企業に温暖化ガスの排出枠を設けるという考えには、企業の成長や衰退という「生態」を無視している。
消費者に支持され成長していく企業に温暖化ガスの排出枠をはめてしまうのは社会の進化を妨げている側面がある。
逆に衰退していく企業にすれば一旦認められた排出枠は社会にとって望ましくない既得権益になる。繁盛している商売からお客がいなくなった商売へお金が流れていくことも発生するのである。

温暖化ガスを排出削減する行動は、石油石炭税増税とその他の税の減税のセットで引き起こすことが出来る。それは個人や零細企業など小さな経済主体にも効果がある。他方排出権取引の方は複雑で不公平感が拭えず、まるでCO2削減の話しが一向にまとまらない「世界の縮図」のように見えてならない。

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