東京電力が労働組合に対し、年収の2割削減することを提案しているという。福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の賠償費用を捻出するためだ。
2割削減とは、まるで国会議員の歳費削減に関するマニフェストのような叩き台に聞こえる。もっともまだ賠償額が確定していないのでとりあえず世論に迎合した対策でも仕方ないのかもしれない。
しかし東電に相応の事故の賠償を負わせ、なおかつ「電力自由化」を徹底すれば、自ずと市場原理で従業員の賃金は適正な金額に調整されるのではないか。
■発電と送電事業の分離は政府の監督という面でも良い
東日本大震災によって、電力会社は原子炉の放射性物質の封じ込める能力を必ずしも持ち合わせていないことが判明した。そして震災直後は「計画停電」を断行したため、電力の安定供給もままならないということを世に知らしめた。
原発の事故防止あるいは原発事故に対し迅速な判断が下せないならば、電力会社から原子力発電所を別の会社に分離した方が良い。分社化すればその組織は原発の維持に専念しその責任が持てるし、政府の方も監督しやすいに違いない。
そして原子力発電所を運営する組織も、その他の発電方法を取る企業との競争関係になればお手盛りの人件費を計上することも抑制するだろう。
■日本全国の商用電源周波数の統一
もちろん原発以外の発電事業も送電と分離して、発電事業者同士競争をすべきだ。関東の電力の消費者も、東北や北陸そして関西にある発電事業者から電力を購入できる環境になるのが望ましいだろう。そのためには、現在東西で50Hzと60Hzに分断している商用電源の周波数の全国統一が必要になる。
なお周波数の統一は市場原理を追及するということだけでなく、この度の大震災で発生したような電力不足を全国で受け止めるためにも実現する意義のある。
■都市ガス会社、石油会社の電力事業参入が期待される
発電事業のみならず送電事業が独占的地位に胡坐をかくのを防ぐには、電力自由化の究極の選択肢とも言える「自家発電」が必要になる。現在でも一部の企業は自家発電の設備を所有している。
家庭のような小口の電力消費者には、今後都市ガスやプロパンガスあるいは石油で発電する装置の商用化が望まれるところだ。燃料電池が相当するだろうか。
電力事業の独占的性質を解消する事が、電力事業者に対し容赦なく責任を追求できる大前提である。また平時に低価格(≒適正なコスト)の電力を享受するだけでなく、東日本大震災のような甚大な災害に抵抗する場合にも複数の電力供給方法が存在する方が強靭な社会になるはずだ。
「電力自由化」などと一見聞こえのいいことをおっしゃいますが,歴史の教訓に学んで欲しいと思います。
東京電力とは何か
http://www.linelabo.com/han/hanhan/hanhan-b1103.htm#110320
で明らかにしたとおり,東京電力の隠蔽体質は分割民営化,自由化の必然の帰結でした。
電力事業は教育や医療と同様,競争原理に本質的になじまないものです。競争にまかせればよいものが残るかのような真っ赤な嘘を信じてしまうのは,すでに小泉自由主義に洗脳されてしまっているとしか思えません。小泉自由化で教育や医療がムチャクチャになった現実を見る力があれば,電力自由化の果てにある常闇(とこやみ)が見えるはずです。
>前田年昭様
はじめまして、ご訪問有難うございます。
一般に隠し事をするということは、(分割)民営化や自由化に限った現象ではないと思います。
公営か民営そして営利か非営利、どんな形態でも透明性の確保が必要だと思います。
すごく勉強になります。
今、ディベートのテーマなんです。
参考にさせていただきます。
>吉森咲捺様
はじめまして、コメントを残して頂き有難うございます。
さて、拙文の方は「電力自由化のメリット」と題しながら「賃金の調整」と「商品の代替」について少々記述しただけで、自由化のメリットとは関係ない主張が多いボヤけた記事で済みません。
ともかく、吉森さんの何らかのお役に立てれば幸いです。