法人税引き下げは間違っているのか

企業にとって税を含めたコストは低い方がいいに決まっている。
企業が生き残りを賭けて、より低コストな国・地域に移転することもあり得る。

作家・三橋貴明氏は法人税減税について日本企業の法人の70%は法人税を払っておらず減税の恩恵は無いと言い、黒字企業の内部留保を増やすだけと批判的である。三橋氏に限らずマスコミの報道も同様のことを指摘する。
三橋氏の予想通り、雇用や投資の増加には結びつかないかもしれない。
しかし日本国内の企業が外国の企業との競争に敗北したり、海外に移転したりして日本国内での雇用を減らすようなことが起きてしまったら元も子もない。雇用を守るためなら国は企業が活動しやすい環境を用意しなければならないのだ。

三橋氏は国内経済の需要が不足していることこそ問題と捉え、「公共投資拡大と的を絞った投資減税」が最も適切と主張している。
しかし企業(特に製造業の大企業)は国内の需要だけを当てにしているわけではない。そもそも今後の日本の人口は21世紀半ばまでに約3000万人も減少する見通しであるから、国内の需要規模が過去と同程度に将来も存在すると考える方が間違っている。
また何らかの新しい商品の市場が発生し国内需要が増加したとしても日本の企業がそれを満たすのではなく外国の企業にその市場を侵食されてしまうかもしれない。
いずれの場合にせよ、世界の企業(労働者)と競争することを念頭に置かなければならないのだ。

公共投資や重点分野への投資減税という政治判断は政治家やその背後にいる圧力団体によって悪影響を受ける。日本全体の経済成長というより、特定の地域や業界への利益誘導が起こる。
また圧力団体の横槍が入らなくとも、将来の有望な産業を見極めるのは困難である。政府の目論見通りに行くと考える方が不自然だ。
経済成長は個々の経済主体の責任で目指した方が全体的に軌道修正がしやすく速い実現が期待できるものではないだろうか。

日本国民の雇用の増加を達成するには大部分の労働者に対し賃下げを強いることが避けられない。
そして投資の増加は法人税の引き下げをはじめとした企業の負担や制約を減らすことが必要である。
その原則から外れた政策には企業から見捨てられる結末が待っている。

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