高校無償化に便乗した高校の税金の取り合いがもう始まった

いずれ高校授業料無償化政策が単なる学校に対する補助金が徐々に変質していくとは思っていたが、もう始まっていたとは想定外だった。

公立高校は文字通り授業料が無料になったが、私立の高校生の場合公立高校が値下げした分に相当する金額を国から直接貰うことは出来ない。そのお金は私立高校に対し就学支援金という名目で支払われ、その分授業料が値下げされるという間接的な給付になる。

以前から私立高校には成績優秀ゆえに授業料を全額免除されている生徒がいる。
ところが、国から就学支援金を学校がもらうために全額免除受けていた生徒から就学支援金相当分を授業料として一旦徴収して同額の奨学金を払うという私立高校が出てきたようだ。(時事通信による)
対象の生徒は何の得もしていないのに、私立高校だけが高校無償化に便乗して税金を受け取ったことになる。

私立高校の言い分は、授業料を全額免除されている生徒が就学支援金の対象にならない法律こそ(学校経営上)不公平ということだろう。全額免除の約束を反故にしても実質無料なのだから学校側としては貰えるものは貰うと。
しかし高校生をかかえる家庭の負担を軽減するという高校無償化の趣旨により忠実な方法として国から直接家庭にお金が渡される仕組みであったら、成績優秀な生徒を渇望している学校は引き続き授業料を免除し続けたのではないだろうか。

子育て支援なら、学校に対してお金を払うより子どものいる世帯に直接渡すのがよい。ひも付きでないお金の方が授業料の改定という名の下の便乗値上げを若干だが抑制できる。高校へ行かず就職する人もいることを考慮すると、より幼少時の手当を厚くして高校生の年頃には給付しないというのも手だ。
きっと家庭への直接給付には私立高校関係者は反対だろう。生徒のことを思うのではなく、高校無償化で制度化された就学支援金は民主党政権誕生で転がり込んだ学校経営上の既得権益だと内心思っているはずだからだ。

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高校無償化に便乗した高校の税金の取り合いがもう始まった への6件のフィードバック

  1. ゆうくんパパ のコメント:

    時事の報道によれば、成績優秀者への減免を取りやめた高校の多くは、奨学金に振り替えているようです。
    だとすれば「生徒は何の得もしていないのに、私立高校だけが高校無償化に便乗して税金を受け取ったことになる」というのは、当たっていないと思います。
    そもそも、授業料無償化と引き換えに特定扶養控除が縮小されて増税になるため、これまで成績優秀者などで授業料を免除されていた生徒は、授業料は減らずに増税だけで、かえってマイナスになります。
    私立高校が減免を奨学金に切り替えているのは、こうした生徒に不利にならないようにするためで、当然のことだと思います。
    減免をただやめただけなら「便乗」かもしれませんが、かわりに奨学金を出している高校まで「便乗」などと報道する時事通信の報道は、おかしいのではないでしょうか。
    これを「目的に反する」などという文部科学省の対応もおかしいと思います。
    文科省は、増税によってかえって負担増になる生徒が出ても構わないというのでしょうか。
    それこそ、制度の趣旨に反すると思います。

  2. 佐藤健 のコメント:

    >ゆうくんパパ様

    ゆうくんパパさん、はじめまして。
    記事をお読み頂き、そしてコメントも残して下さり誠に有難うございます。

    下手ですが、たとえ話を一つ。
    授業料全額免除の特待生制度でデキる生徒を招き学習環境の向上を目指してきた私立高校の理事長「サトウ」が、公立高校無償化に相当する私立高校生への支援の詳細を知って愕然としました。

    「私立高校生一人当たり11万8800円を私立高校に支払う。ただし現在授業料全額免除されている生徒には一切支給しない。」

    理事長サトウは、私立の一部の優秀な生徒だけをないがしろにしていると言いました。
    (内心では、授業料全額免除を実施してまで生徒を集めた学校が馬鹿を見たと憤慨しています)

    しかしすぐに理事長サトウは気づきました。
    全額免除制度を即廃止して特待生から授業料年額11万8800円徴収する。
    徴収したお金をそのままの金額で本人に返す。ただし奨学金を給付したという形式で。
    後日、国から支給される11万8800円の使い道は高校の自由だ。

    理事長サトウは早速、特待生「ゆう君」に話を持ち掛けました。
    ゆう君は高校無償化制度の欠陥をすぐ理解しました。理事長の気持ちも分かります。

    しかし、ゆう君の家庭は高校無償化政策によって何ら負担の軽減はありません。
    ゆう君の獲得していた授業料全額免除の権利は並みの同級生とは比較にならない努力の積み重ねの結果です。
    もし授業免除にこだわらなければ、もっと難しい私立高校にも合格できる実力を持っていましたが、
    家計が苦しかったのでなるべく安く済むところに進学したのでした。

    ゆう君にとって高校無償化は、移ろいやすい世の中を痛感させられた空しいだけのイベントでした。

    ゆう君パパは、この顛末に対し親孝行で頑張り屋の息子をどうねぎらえばいいのでしょうか?
    たとえ話終わり

    高校無償化の現行の制度は、既に成績優秀で全額授業料免除という権利を得ている生徒の家庭には全くメリットがありません。ゆうくんパパご指摘の通り扶養控除の恩恵を失う場合むしろ損をすることになります。
    全額免除は成績優秀であることそして免除する学校に入学するのが条件ですから、誰でも入れる高校の授業料免除と同列に扱われるのは酷だと思います。

    時事通信の報道は、全額免除者だった生徒から授業料を徴収したうえ同額の奨学金支払いで相殺したことを伝えています。
    この場合、制度導入前後で全額免除者の学校への支払い額に変化はありません。しかし高校には全額免除者一人当たり11万8800円公金が入ったのです。

    現行の高校無償化制度や文部科学省の対応では全額免除者の持つだろう不満を解消できません。
    なので私は、子ども手当のような家庭への直接現金給付を厚くしたほうが不公平感や中間団体の搾取が少なくていいと思いますが、いかがでしょうか。

    ゆうくんパパさん、批判も大歓迎です。またぜひお越しくださいませ。

  3. ゆうくんパパ のコメント:

    ご意見は、よくわかります。
    ただ、家庭の直接給付する形にすれば、今度は、給付を受けていながら他に使ってしまって、授業料を滞納する親がきっと出てきます。
    そういう親は少数だとは思いますが、何人かでもいれば、マスコミは大騒ぎするでしょう。
    それで、制度全体が悪く言われるようになるような気がしますが。

  4. 佐藤健 のコメント:

    >ゆうくんパパ様

    度々のご訪問有難うございます。

    もうすでに一部の親は、子ども手当を親自身の専ら遊興費に使ってしまったに違いありません。マスコミがあまりその辺を追求していないだけだと思います。
    対象年齢がずれているとは言え、理屈の上では子ども手当が私立高校生をかかえて困窮している家庭の授業料滞納を少しでも減らすはずです。しかし無計画で、だらしない親は相変わらず以前と同じように滞納していることでしょう。

    ゆうくんパパは、子育てを大義名分にした税金の支出は当然子ども自身が人格を成長させたり、幸せになるために使われるべきだとお考えのことと思います。私もそれが出来れば最上だと思います。

    しかし、現時点で私は子ども手当でその家庭が楽になりさえすればよいと考えています。子どものいない世帯から、子どものいる世帯への単純な所得移転(家計支援)政策です。
    ほとんどの子どもは勉強が苦手なままでも、それなりに成長し社会のどこかで役に立つようになります。そして私たちは誰でも老後、間接的に他人の世話になります。ですから社会全体で子どもを育てている家族を応援するのは良いことだと思います。

    子ども手当が、お父さんのギャンブルの掛け金に消えたり、お母さん同士のとりとめのない話ばかりのランチ代に化けてもいいと思います。それで仕事・家事・子育てのストレスを発散し、ご機嫌で優しい両親になってくれればいいのです。

    (もっとも現金給付にしようが、高校が全く便乗値上げせず学費を下げようが自由にお金が使える点では同じことになるはずですけれど。)

    何はともあれ家庭に直接現金給付の欠点として、もともと子どもの存在を無視するような親に対しては税金のムダ使いであることが上げられます。
    高校を通じた間接給付の欠点として、学校側が授業料を値上げしたり、授業の質・量を落としたら学校への補助金に変質してしまうことがあります。

    いまのところ、私としては公益法人という建前で既に金銭的特権を持つ法人でありながら、あまりお金の使途がオープンとは言えない学校法人が信用ならないということと、そもそも大部分の人にとって高校が必要不可欠なのか疑問がある点で、高校無償化(と私学への就学支援金払い込み)に反対です。

    逆にその二点が改善すれば、間接給付も子どもの成長に直結し許容できると思います。

    ゆうくんパパさん、よろしければこれからもご訪問ください。よろしくお願いします。

  5. 給食費を納付しないで、卒業する生徒が居る時代ですよ。 のコメント:

    もともと、成績優秀者やスポーツ特待生の授業料の負担は、多くの一般入学の生徒の授業料からまかなわれていました。つまり、学校会計の収入の一部が、使われていたことであり、国の奨学金以上の軽減分は、普通の高校生の授業料が、原資です。
    学校法人も、経営ですし、国立大学法人も経営ですから、法令違反でない限り、あらゆる民間寄付団体や個人の寄付、国の奨学金など、収入になりえるものは、戴いて、教育内容に還元するのは、当たり前のことでしょう。
    私立学校において、「学校側が授業料を値上げしたり、授業の質・量を落としたら」すでに、若者人口より高校定員の方が上回っている状況下では、より教育内容のよい、より金銭負担の少ない高校へ、転出してしまうでしょう。それが、競争原理です。学区制の小中学校とは、違います。
    また、学校法人は、会計基準により、余程、公立学校より、収支チェックは、複数の公認会計士により受けています。
    「学校への補助金に変質してしまうことがあります」仮に、補助金のような変質が起こったとしても、その使途が、生徒に還元される使途であるなら、親のパチンコ代に消えるより、良いと思います。

    私学補助金が、先生のパチンコ代に、消えたとすれば、刑事事件で、立件されるでしょうが、親がもらった子供手当を親がパチンコ代に使っても、罰する法令はありません。

    「扶養控除の恩恵を失う場合」これは、既得権を失うことや、高校、大学生を持つ親の年代の家計の苦しさから、理解できますが、納税をシンプルにしていくと言う大きな流れから行けば、やむを得ないところもあるでしょう。日本ほど、控除項目の多い国は、ありませんから。。

    個人的意見とすれば、教育の責任者は、理事長により良い環境(経済的にも)を求める訳で、そのために、合法的に収入を増やす努力をする理事長は、経営者として、まったく普通の行動だと思いますが。。(得られた収入が、生徒に還元される前提はありますが)

    少なくとも、個人に金をばら撒くより、間接補助の方が、会計チェックを受ける分だけ、公正に使われていると、信じております。

  6. 佐藤健 のコメント:

    >給食費を納付しないで、卒業する生徒が居る時代ですよ。様

    はじめまして、コメント有難うございます。
    仰るとおり学校関係者のとった手段は合法です。
    しかし特別成績優秀であったり、スポーツの技能が認められてその学校に授業料無料で入学した生徒に何のメリットもありません。直接家庭にばら撒けばそんな不公平も無かったと思います。

    少子化に伴い公立高校の定員も削減したりしています。私立高校の間ではあまり競争原理が働いていないと思います。正直最近のことはそれほど詳しくありませんが、他校への転出は容易になっているのでしょうか。

    私は、子どもの頭数で世帯に給付された現金(子ども手当にしろ高校無償化のお陰で当面浮いた家計など)が何に使われてもいいと思っています。もちろん親の遊興費でも。現金給付とは子どものいる世帯を経済的に楽にするのが目的です。子どもにもっとお金を掛けろと言うこととは違います。
    そもそも授業料無償で入学した生徒の家庭は、払わずに済んだ相当の金額を何に使ってもよかったはずです。

    給食費未納については、それはそれで問題ですね。私は増税して給食費税負担がいいと思います。教師が図々しい親たちへの対応に時間を費やすのは詰まらないことですから。

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